表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/174

第123話  実家に帰ろう! その14



「さぁ、楽しい楽しい二次会の始まりだ……」

「くっ……」

「……」

「……」


(どうする!? どうすっる!? マジでヤバいぞ!?)


 エルモアとネピアは既に心折れたか、うな垂れるようにして膝をついている。クリちゃんとラヴ姉さんは変わらず動けないでいた。


(流石にクリちゃんとラヴ姉さんは動けないか…… なら……)


「スコッティさん! スコッティさん!」

「あ…… あ……」

「このままじゃ愛娘の危機ですよ!? 俺もエルモアとネピアを助けたい!」

「……」

「スコッティさん!?」

「……捨てよう」

「え……」

「捨てる」

「娘達をですかっ!?」

「違うな」

「え……」

「この身をだぁーーー!?」


 愛娘達を守るようにしてエリエール様に立ちはだかる、一匹の漢エルフ。それを嬉しそうに眺めるエリエール様。スコッティさんの身体の周りには「気」とおぼしきオーラが揺らめいている。


「ほう。この私に勝てるとでも?」

「……娘の危機に立ち上がらない父はいない」

「スコッティさん!」

「黙れ! 婿養子風情が!」

「くっ…… 俺の精神から食い破ろうとするとは…… 流石はエリエール……」

「勢いだけが取り柄のクソ婿養子。貴様が私と一緒になれたのは種に勢いがあったからだけだ。でもないと愚姉妹ファッキンビッチーズは生まれなんだ。だが貴様は種まきの済んだ粗大ゴミ。せいぜいタケノコの山の愚女ファッキンビッチに薄く弱り切った種をまく事だけ。いや…… 打ち止め種なしクソ野郎か?」

「やめろぉ~!? 俺の存在を否定するなぁ~!?」


(スコッティさん…… 種まき好きそうですもんね……)


「ネピア!?」

「と、父さん」

「既にドアにはロックの魔法が掛けられている」

「え…… いつの間に……」

「どのような魔法式を組んでいるか分からん…… 気をつけてな……」

「父さん! 父さんはどうするのよ!?」

「ふふっ これでも精霊の国では、五本の指が入る種まきとして君臨していたんだ……」


(え……? 五本の指が入るの……? スコッティさんに……?)


「行け!? 解除して転進しろ!」

「くっ……(ダッ!)」

「お父さん! お父さんも一緒に!」

「そいつは聞けない相談だ…… いい娘になるんだぞ……」

「お父さん!」

「タロくん?」

「はい!」

「娘達を…… よろしく頼む……」

「スコッティさん……」


 ドア付近ではネピアが懸命に魔法式を読み取っているのだが、如何せん上手くいっていないようだ。


「遺言はもうお終いか?」

「……タロくん?」

「はい!」

「出来れば助けに来てね?」

「……」

「タロくん!?」

「社会派紳士は…… 必ず助けます……」

「タロくん!」

「最優先事項をロリフターズであるエルモアとネピアの生命に決定!」

「いやぁーーー!? (おぐぅ!?)」


 まともに吹っ飛ばされるスコッティさん。軽やかな足取りで追撃を試みようとしているエリエール様。転進は決定したものの、未だドアは開かない。


「ネピア!? まだか!?」

「魔法式の解析は済んで、解除魔法式を組み込んだんだけど開かないの!」

「ならエルモア!?」

「はい!」

「ロリフターズが姉妹だって事を見せつけてやれ!」

「行きます!」


 言葉と動きが絶対的にリンクして、エルモアのスピードを追い切れなかった俺の目は、蹴り破られたドアを認識するまでは、彼女の残像を脳で処理していた。


「出るぞ!」

「父さん!?」

「お父さん!?」

「構うな愛娘達よ! 新しい人生を築くんだ!」

「絶対に守り抜きます!」

「守り切ったら迎えに来てよタロくん!?」

「……来世で」

「いやぁーーー!?」


 エルモアとネピアはスコッティさんを気に掛けていたが、クリちゃんとラヴ姉さんが慌てて付いてくると、覚悟を決めたように外へ出て行った。


「父さぁーーーん!」

「お父さーーーん!」


『いやぁーーー!? 何するの!? え!? ちょ、ちょっと!?』

『娘が使えなければまた作るまでよ……』

『いや…… もう一ヶ月間連続して出し続けたくない……』

『安心しろ…… 今回は出し切ったら終了だ……』

『いやぁーーー!? 結局死ぬってことだぁーーー!?』


(あなたの命は…… 絶対救います…… 来世で……)


 俺たち五匹は駅まで猛然とダッシュする。体力が無いとかそんな事を言ってられない状況。身体のどこもかしこも悲鳴を上げる頃に駅に到着する。


「寝台列車は来てるか!?」

「あっ!?」

「出発して!?」

「マズいっぞ!?」

「乗るしかないよ!?」

「「「「「 行っけーーーーーー!!!!!! 」」」」」

「お客さ~ん!? 切符!切符!」

「おっちゃんごめん!」

「緊急事態!」

「乗るで~!」

「ごめんなさい!」

「行くぞ~!」


 走り始めた寝台列車に強引にライドする五匹。乗車後に車掌さんに怒られるものの、比較的すいていた寝台列車の切符を車内で購入し、事なきを得る。だが車内には父を心配するネピアとエルモアの悲しい姿。


「父さん……」

「お父さん……」


(くっ…… なんて声を掛ければいいんだ……)


「父さ~ん」

「お父さ~ん (ハッ!?)」


(どうしたエルモア!?)


「クエルボちゃん!?」

「へ?」

「クエルボちゃん忘れたぁ~!?(ガクッ)」

「え……? クエルボちゃん……?」

「駅の…… ロッカーに……」

「そ、それは分かるんだけど……」

「うぅぅぅ……(グスッ)」


(泣いたぁ!? エルモアが泣いたぁ!? スコッティさんの事でも泣かなかったのにぃ!?)


「え、エルちゃん……」

「流石はエルもっち! クエルボの方が上!」

「ね、姉さん……」


(エルモアの順位付けは、スコッティさんよりクエルボちゃんの方が上か……)


「エルもっちも可哀想だけど、ネピっちはもう漫画読めないね!」

「はっ!? (ガクッ)」

「ね、ネピア?」

「一生懸命集めたのに…… 初版手に入れる為に精霊の国を駆け回ったのに…… うぅぅぅ……(グスッ)」


(泣いたぁ!? ネピアが泣いたぁ!? こいつが人前で涙を構わず見せるなんて!?)


 アドリード王国で一度、寝ながら涙を流したネピアを見た事はあったが、こんな風に感情をさらけ出して泣いたのを見るのは初めてだった。


「「 うわ~ん!! 」」


(スコッティさん…… やっぱり種まきは程ほどにしないと愛娘達の順位付けが下がりますよ?)


 何回も助けを求めたスコッティさんを、防人にして置いてきた事が流石に可哀想だと感じる社会派紳士。だが、ロリフターズを守り切るという気持ちには嘘はない。せめてこれだけは達成してやろうと心に誓うのであった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ