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第121話  実家に帰ろう! その12



「「「「「「 チョリ-ッス!!!!(ッス!!) 」」」」」」

「「「「「 あははははは~ 」」」」」」


 楽しい。とても楽しい。楽しい時は何をやっても楽しい。どう転んでも、どう起き上がっても楽しいモンは楽しい。何回心の中で楽しいと思ったか。そんなお花畑になった脳内を考えて吹き出す俺。


「ぶふぅ!」

「あんたぁ~ 何吹き出してんのよ~ ぷぷぷ」

「いやぁ~ 楽しすぎて堪えきれなかった~」

「アホねぇ~」

「アホだわ~」

「「 あははははははは 」」

「あたしも入れて~ 楽しそ~」

「楽しいよ~ ラヴ姉~ ラヴね~ ね~」

「「 ね~ 」」

「私も入れて~」

「「「 ね~ 」」」

「こりゃ私も入らんと~」

「「「「 ね~ 」」」」

「お父さ~ん 私も入るよ~」

「「「「「 ね~ 」」」」」

「社会派紳士参上!」

「「「「「 ね~ 」」」」」


 久しぶりに皆で一緒に上半身を傾けながら、通じ合う気持ち。


「いや~ こんな開放的になるのは久々だぁ~」

「父さんはいつも開放的でしょ~」

「そうだったな~」

「「 あははははははは 」」

「ラヴ姉さん! 開放的になっちゃう! (バッ!)」

「「「「「 おぉ~ 」」」」」

「ラヴちゃん!? いいね~ 若さある勢いとそのサラシがまた!」

「ん~? おじさんサラシ好き~?」

「むしろそのサラシの内面かな~?」

「じゃあ後でね!」

「むふぉ~ん! なんとまた期待させるこの物言い!?」


(脱いで欲しいし俺も脱ぎたい!)


「なんだか私も暑くなってきたよ~ (パタパタ)」

「ふぉ~ん! クリネックスちゃんのお腹ふぉ~ん!」

「父さんはアホね~」

「アホだぞ~」

「「 あははははははは 」」

「乾杯しよう!」

「「「「「「 チョリ-ッス!!!!(ッス!!) 」」」」」」

「「「「「 あははははは~ 」」」」」」


 最高の宴で最高の面子。もう、どうにでもなりそうな状況になりかけている。そんな中、エリエールさんがリビングのドアに何かしていた。


(ん~? あれ~ もしかしてロックの魔法か~? 玄関でもないのに~ けど酔っ払ってるからなぁ~ うぇ~い)


「エリエールさんも飲みましょう!」

「そうそう! 母さんもそんな静かにしてないで飲もうよ!」

「お母さんのワインのおかげで楽しいよ!」

「楽すぃ~!」

「……頃合いか」

「どうしたエリエール?」


(頃合い? 宴もたけなわ?)


「エルモア?」

「なに~?」

「ワインは美味しかった? どのお酒よりも?」

「美味しいよ~ けどクエルボちゃんには負けるかな~ (ハッ!?)」

「クエルボ……? ワインにそんなのあったかしら……?」

「……いえいえ。テキーラのお話で(ハッ!?)」

「……そう。エルモアは女王様の血ではなくて、いつも不純なお酒を飲んでいたの?」

「そ、それは……」

「質問には答えるようになっているはずよ」

「ま、毎晩……(ハッ!?)」

「……そう」


(あれ…… 場が一気に静かになったぞ…… あれ程に隠しておきたかった事をエルモアが自爆して……? 違う…… 自白……?  強制自白…… ハッ!?)


 気が付いたのだ皆。この赤ワインに何か仕組まれている事が。状況を察知したネピアはおろか、何故かスコッティさんもガタガタと震えていた。


「ネピア?」

「さ、サー!」

「どうして連絡してこなかったの?」

「い、いや……」

「話しなさい」

「くっ……」


(耐えてる…… 何か強制的な力が働いているのを必死に耐えてる……)


「ネピア答えなさい」

「あ、あ…… し、深林海岸に……」

「深林海岸に?」

「……人間の船が来ていて」

「それにエルモアと一緒になって密航したのね?」

「くっ……」

「そう…… 勝手に任務もこなさず逃亡……?」

「ち、違っ」

「どこに行ってたの?」

「ギルディアンを経由してアドリード王国……」

「どうやって戻ってきたの?」

「タローが…… アドリード王国で八百万クイーンを稼いでくれて……」

「そう。タロさん?」

「は、はい!」

「どんな仕事を?」

「か、カニ漁です……」

「金額は?」

「八百万クイーン……」

「ここまでの船賃は?」

「一匹当たり百万クイーン……」

「そう。ネピアも嘘をつく程に魔法耐性があったわけじゃないのね」


(マズいぞ…… 奴隷であった事は知られないようにしないと……)


「スコッティ」

「い、嫌だぁ……」

「何をそんなに恐れているの?」

「ぐぅ…… な、何も…… ぐぅ……」

「何を…… 恐れている……」

「た……」

「た?」

「た、タケノコの山の…… お、幼妻エルフと……」

「そう。それは後でゆっくり聞く。地下室でな」

「そ、そんなぁ!? 地下室だけは! 地下室だけはどうかお許しを!」

「地下室に行ったら許してやろう。このクソ穴野郎」

「いやぁーーー!?」


 スコッティさんが尋問されている間に、ネピアが隠れて魔方陣を展開していた。その魔方陣を己とエルモアに掛けると、エリエールさんがネピアに話しかける。


「ほう。この魔法式を短時間で解いたか」

「……」

「だが、貴様だけではない。クリネックスとラヴ? こいつらはアドリード王国で何をしていた?」

「(むぐぅ!?)」

「(むぐぅ!?)」


 クリちゃんとラヴ姉さんの口を慌てて塞ぐエルモアとネピア。だがエリエールさんは矛先を俺に変える。


「おい。もう一匹のクソ野郎」

「はっ はい!」

「答えろ。エルモアとネピアと何をしていた?」

「お父さん!? タロさんの口を塞いで! ネピア早く!」

「今クリちゃんとラヴ姉の魔法式を解いてるけどまだかかるわ! タロー!?」


(さっきは身体が動いたのに…… 質問されると思うように動けなくなるのか……? スコッティさんも打ちひしがれている……)


「し、仕事……」

「仕事……?」

「一緒に仕事をして…… 帰郷出来る船賃を……」

「他には……?」

「一緒に酒を飲んで……(むぐぅ!?)」

「ほう。この私に刃向かうとは…… スコッティよ……」

「……愛娘の願いとあらばこの命も捨てる覚悟さ」

「なら捨てて貰おう」

「いやぁーーー!?」

「父さん!? タロー!? 早くこっちへ!」


 同じく魔方陣を展開させて、俺とスコッティさんに掛けられた魔法を解くネピア。だがエリエールさんは微動だにしない。


「こ、これでもう強制自白する事はないわ」

「何をそんなに恐れいてる我が娘よ」

「そ、そりゃ恐れるでしょ? 誤解とは言え、指示された任務を放棄してしまったんだから……」

「誤解? 誤解…… はっ…… はぁーーーーーっ! はっはっはっ!」

「「「「「(ビクゥ!?)」」」」」

「面白い事を言うな」

「そ、そう?」

「お前達は何かを隠している……」

「……」

「エルモア?」

「……」

「何を隠している……?」

「な、何も…… か、隠してなんか……」

「隠している」

「エリエールさん! エルモアとネピアも一生懸命仕事して帰郷したんです!」

「だから……?」

「確かにお酒は飲んでしまったかもしれません! けれど、ちゃんと戻ってきました!」

「それで……?」

「俺はエルモアとネピアと出会えて本当に良かった! 救われたんです! もし出会えていなかったら…… 俺は……」

「……」


(伝わってくれ…… 本当にエルモアとネピアには救われたんだ……)


「救われた……?」

「俺は身一つでこの世界にやって来た異世界人なんです! 何も知らないこの世界で俺を救ってくれたのはこのエルモアとネピアだ!」

「救われた…… ふふっ」

「本当なんです!」

「違うな」

「異世界から来たなんて信じられないかもしれないですけど! 俺はエルモアとネピアに救われたんだぁーーー!!!」

「タロー……」

「タロさん……」

「救われたのはお前じゃない。この愚姉妹ファッキンビッチーズだ」


 そうして目の前に突きつけられた一枚の紙。どうしてそんなモノがここにあるのか。それは奴隷解放申請した時に作製した書類だった。











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