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第120話  実家に帰ろう! その11



「うぇ~い!」

「ちょっとラヴ姉さん? 実家なんですから少しは……」

「いいんだよタロくん」

「スコッティさん」

「ささっ ラヴちゃん? いっぱいワインあるからいっぱい飲んでいってね?」

「わ~い! ありがと~!」

「クリネックスちゃん?」

「はい」

「クリネックスちゃんとも久しぶりだからいっぱい飲んでくれると嬉しい」

「はは…… でもいっぱい飲んじゃうと寝ちゃいますから……」

「大丈夫さ。ラヴちゃんと一緒に私の寝室で寝るといい」

「えっ!? スコッティさんの寝室ですか?」

「大丈夫だよ。ラヴちゃんと一緒になって寝ようじゃないか? ね?」

「は、はぁ」

「父さん?」

「はい」

「謹んでね」

「はい」

「全く……」


(スコッティさんとは1on1で飲んでみたいな……)


「お父さんも飲んでね」

「ありがとうエルモア。愛娘に注がれたワインは何より美味しいよ」

「タロさんもどうぞ」

「ありがとうエルモア。なんだか俺も嬉しいよ」

「どうぞどうぞ」

「じゃあ俺もエルモアに」

「ありがとうございます」

「いいね~ なんだか夫婦みたいだ~」

「「「「「 !? 」」」」」

「ちょ、ちょっと父さん!?」

「ん~? なにかな~? ネピアは何かあるのかな~?」

「べ、別に何もないわよ……」

「ほらタロくん? ネピアがご所望だよ?」

「あ、はい。ネピアも一緒に飲もう」

「い、いいわよ。自分で注ぐから……」

「拗ねちゃったぞ? え? どうやって機嫌を直すつもりだいタロくん?」

「す、拗ねてなんかないわよ!」

「もう、あれしかないんじゃないのか~?」


 楽しそうに会話をし続けるスコッティさん。愛娘達が連れてきた客人にもフランクに接してくれる。同じ男として魅力も感じていた。


「あれって何~?」

「ラヴちゃんには後で教えてあげるから、さぁさぁ飲もう」

「は~い!」

「お父さん?」

「なんだ?」

「お母さんが……」

「(ビクゥ!?)」

「……」

「……」

「……お、お酒の席のお話ですよ? エリエール様?」

「(ちっ)」


(え? 今、舌打ちした?)


「そ、そう言えば連絡もしないでエルモアとネピアは何していたんだ?」

「……」

「……」


(場面を切り替える為にした話が地雷か)


「……連絡」

「「(ビクゥ!?)」」

「……しなかった事は不問にしましょう」

「ほ、ほんと? 母さん?」

「本当? お母さん?」

「はい。さぁ飲みなさい。ワインをたっぷり」

「「 サー! 」」


 それからと言うもの、喉のつかえが取れたようにワインを一気に飲み干していくロリフターズ。そんな微笑ましい状況に俺も飲まれていく。


「うぇ~い!」

「ラヴはワイン好き?」

「大好き!」

「そう言えばラヴ姉さん、BBQの時に赤ワインを持ってきてたよね」

「うん! 髪と同じ赤色だし好き!」

「ならとっておきのを出しますね。ラヴさん」

「えっ!? ホント!?」

「赤ワイン好きに悪い方はいませんから……」


 エリエールさんは一度リビングから退出し、どう見ても高級そうな箱に入った赤ワインをテーブルの上に置く。


「おぉ~ これはとてもお高いんじゃ?」

「気にしないで飲んでくれた方がワインも嬉しいでしょう」

「やったぁ!」

「ラヴ姉さん? 一気に飲まないで味わって下さいよ?」

「うん!」

「一気に飲んでも構いませんが、これしか有りませんので皆で分けましょう」


 エリエールさんが直に皆に注いでいく。グラスに満たされていく赤色の果実酒。まるでグラスに入る赤ワインが、己の心に満たされていくような感覚さえある。


「さぁ、どうぞ」

「「「「「「 かんぱ~い!!!!!! 」」」」」」

 

(美味い…… 口内、喉、胃からワインが染みこんでいくよう。そして心が開いていくような解放感)


「すご~い! すご~いぞ~! 染みこんで解き放たれていく~!」

「ラヴに同意。ありがとうございますエリエールさん」

「これはラヴ姉さんに同意せざるを得ない。美味しい」

「スッと入っていくわね」

「お母さん美味しいよ」

「こりゃ美味いね~ 私も初めて飲んだよ~ いつ手に入れていたんだ?」

「……」

「エリエール?」

「……なんでもありません。さぁ、まだ有りますから注ぎますね」


 同じようにエリエールさんが直に皆に注いでいく。それを皆が味わう。アルコール分は他のワインと変わらない筈なのだが、飲む前とは違っていい酔いが脳を闊歩する。


「チョリ-ッス!」

「ラヴ出来上がったね~ チョリ-ッス!」

「クリちゃんだって良い気分でしょ~ チョリ-ッス!」

「そういうネピアだって~ チョリ-ッスッス!」

「エルモアもだろ~? チョリ-ッス!」

「「「「「 チョリ-ッス!!!!(ッス!) 」」」」」

「なんだぁ~? その、ちょ、ちょり?」

「「「「「 チョリ-ッス!!!!(ッス!) 」」」」」

「チョリ-ッスッス!」

「「「「「「 チョリ-ッス!!!!(ッス!!) 」」」」」」

「「「「「 あははははは~ 」」」」」」


(すげぇ~ めっちゃ良い気分になってきたぞ~)


「いや~ こりゃエリエール様々だなぁ~ よくやった!」

「……」

「どうした~? エリエール~? ん~?」

「……」

「なんだ~い? 俺が愛娘に意識を取り過ぎて嫉妬でもしてるのか~? ハハッ」

「(ちっ)」

「まあいい。飲もうじゃないか! 愛娘達の大事な人たちよ!」

「うぇ~い!」

「あ~ なんだか酔ってきたよ~」

「クリネックスちゃんはこの後、寝室行きかな~?」

「スコッティさん? クリちゃんは渡しませんよ?」

「あんたにも渡さないわ」

「あたしも! あたしの!」

「大人気だねクリちゃん!」

「あはは~ でも嬉しいよ~」

「ホントかい!?」

「父さん? 全く……」

「ふふ。安心してくれネピア? 本日は皆で一緒に寝るんだ」

「なっ!?」

「それはとても良い考えだと思います。流石はスコッティさん」

「私は自分の部屋で寝ますね」

「「なっ!?」」 

「愛娘エルモアよ!?」

「エルモア!?」

「皆で寝るにはお父さんのベットじゃ狭いですから」

「大丈夫さ!」

「安心!」

「全く信用ならないわね…… 私も久々に自分の部屋で寝たいし……」

「ネピア!?」

「俺ネピアの部屋でもいいな」

「「「「 !? 」」」」


(漫画いっぱいあるって言ってたから楽しそうだよな)


「でもエルモアの部屋もいいな」

「「「「 !? 」」」」


(すっごく気になりますエルモアの部屋)


「いいね! タロくんはいいね!」

「いえいえ。スコッティさんには敵いませんよ」

「タロさんはネピアの部屋で寝たいんですか?」

「はい」

「い、嫌よ…… だ、駄目だからね……」

「じゃあ私の部屋で寝ますか?」

「はい」

「だ、駄目よエルモア!? そ、そんなこと……」

「じゃあネピアの部屋ですね」

「い、嫌……」

「じゃあタロさんは私の部屋で」

「はい」


(やったぁ!)


「だ、駄目よ姉さん!?」

「じゃあどっちにするの?」

「……」

「ネピア?」

「まぁまぁエルモア? 間を取って父さんの部屋にしようじゃないか? ね?」

「……それはちょっと」

「なんでぇ!? エルモア!? どうしちゃったの!? 父さん悲しぃ!」

「まぁまぁスコッティさん? ここはエルモアの気持ちを汲んであげましょう」

「タロくん…… うぅ……」

「俺はエルモア部屋で一緒。後はスコッティさんの部屋。それで決定」

「なっ!?」

「そうだね。そうしようか。とても良い案だ。皆の気持ちを尊重している」

「してない! 全然してない!」

「困った娘だネピアは…… 一体どうしたいんだい? あれも駄目。これも駄目。う~ん。思春期は難しいね」

「ネピアは難しいですから」

「あんたぁー!? 何が難しいよ!? あんたが簡単過ぎるんでしょ!?」

「オラぁ!? 今なんつったネピア! コラぁ!?」

「ぷぷぷ。夫婦喧嘩だよ~ あ~ いいもの見れた~」

「父さん!?」


 俺たちはみんな飲まれていた。この楽しい雰囲気に。だが飲まれていたのだ赤ワインに。気が付かなかった誰も。エリエールさんが一滴もこの赤ワインに口を付けていない事に。











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