第118話 実家に帰ろう! その9
「お~い! みんなぁ~!」
「あっ! ラヴ姉!」
「ラヴさん!」
「ラヴ!」
どうやってこの場所を探り当てたのか、ラヴ姉さんはロリフターズ実家の裏山近くにある広場に駆けてやって来る。
「ラヴ姉さん…… どうやってここが?」
「(すんすん!)」
「……匂いですか」
「匂い! 四匹! 違う!」
「流石ですね……」
「あたぼ~よ!」
ラヴ姉さんとそんな他愛ないやり取りをしていると、先ほどのようにエルモア、クリちゃん、そしてネピアが全力でボディーランゲージとハンドサインをラヴ姉さんに向かって送っていた。
「あん? なんだ~い!?」
「(ラヴさん! 差し込まれます!)」
「(ラヴ姉! 穴! 穴!)」
「(ラヴ! いじくり回されちゃうよ~!)」
「どうしたん?」
「いや…… 先ほどからあんな感じで……」
ラヴ姉さんにロリフターズが作られた機械生命体であるという事を伝えようかと思ったが、大事な話なので彼女達から直接聞いた方がいいだろうと思いとどまる。
「ちょっちいてくる!」
「ラヴ姉さんお願いしますね」
「あいよ~! 任せときな!」
「本当に頼みます」
(こういう時は頼もしさあるなラヴ姉さん)
「どしうたん?」
「(無事の帰還、女王様に感謝します)」
「(ラヴ姉? あの淫獣に何もされなかった?)」
「(ラヴ~ 心配したよ~)」
「何もされてないよ~ ってか何されるん? それになんで小声なの?」
「「「( 穴 )」」」
「穴?」
「(穴を見ようとしてきています。既にネピアが被害にあって……)」
「(う、嘘よ!? 姉さん!? 嘘と言って!?)」
「(誰しも超えなくてはならない悲劇がある…… それが先ほどだったという事……)」
「(いやぁーーー!?)」
「(ラヴ? ズーキさんは何故かネッピーの穴を狙っている)」
「穴…… あな…… ハッ!?」
(なんだ? ラヴ姉さんが走ってこっちに)
「ズーキくん! 凄い! 良くやった!」
「え?」
「どこまでいったんだ~い!? 穴よ穴ぁ~?」
「えっと…… 差し込んでみたかったんですけど……」
「差し込んで!? 既に差し込んで!?」
「あ、え、えっと…… それも叶わず見る事も、形を知る事も出来ませんでした……」
「そうかぁ~ けど頑張ったね!」
「そ、そうですかね」
「頑張った! ネピっち!? ちゃんと見せてあげなきゃ駄目!」
「「「 !? 」」」
「ど、どうして淫獣に穴を見せなきゃいけないの!?」
「ふふっ それは紳士、社会派紳士がそう望んでいるからさ! ネピっちよ!」
「け、けど」
「いいじゃないさ~ どうせいずれか見せる間柄なんだから~ ね~」
「そ、そんな事は」
(なんだか見せる流れになってきているのか……? もしかしてラヴ姉さんは既に知って……?)
「ラヴ姉さん? ラヴ姉さんはエルモアとネピアが機械生命体だって知っているの?」
「え? 何それ? 機械? 生命体?」
「あれ? 知らなかったの? 俺はただそういう生命体には必ず、外部接続出来る端子があって…… それを見てみたかったんだ。色々な規格があってさ。ケーブルを有線接続出来るはずなんだ」
「ん~? よくわからん? 穴って大事な所じゃないの? あるじゃんね、あたし達には?」
「大事な穴ではあると思うけど、あたし達? …………ハッ!?」
(もしかして…… 穴…… 大事な…… 所……)
チラリと三匹を見つめると怯えたように身体を隠す。エルモアは多分おへそに何かされると勘違いしている。だがそれはまだいい方だ。多分にネピアとクリちゃんは本当に大事な部分の穴を想像しているのだろう。
(ヤバい…… 完全にやらかした……)
「ち、違うんだ! その穴じゃない! エルモアとネピアが作られた存在だっていうから、俺はその機械生命体である証としての接続口を!」
「……」
「……」
「……」
「なんな~ん? おいてきぼり~ かなすぃ~よ~」
「ら、ラヴ? ごめんね。説明してあげるね」
「うん!」
そうして四匹になった女性陣はこちらとの距離を保ちながら、円陣を組み会合を始めていた。そして蚊帳の外である悲しい紳士が一人。しゃがみ込み、地面に生えている草を一つ、また一つつまんでいた。どれ程の草をつまんだろうか、ヒポに食べさせてやりたいと思える程に草が溜まってきた頃に彼女達はやってきた。
「ズーキくん違うって! なんだか…… え~と…… 本のお話だって!」
「え? じゃ、じゃあ作られた存在ってのは……?」
「……あんたが、SF小説マニアだってヨヘイ爺さんから聞いていたから、そう話しただけよ」
「なんだよ…… すごく驚いたぞ……」
「お、驚いたのはこっちよ!」
「そ、そうかもな…… す、すまんな。俺の言い方が悪かったかもしれない」
まず話の出来そうなネピアに詳しく説明した。ラヴ姉さんには全く理解されないものの、ネピアは俺の話をまるで小説の内容を聞くかのように理解してくれていった。エルモアとクリちゃんは最初こそ疑惑の眼差しを向けていたが、かみ砕いてネピアが説明する事により事件は解決する。
「え、エルモア?」
「なんでしょうか?」
「ちょっとだけ距離離れてない?」
「そうでしょうか? いつも通りだと思いますよ?」
「……絶対離れてる」
「……離れていません」
「じゃあ近づくよ」
「……(スッ)」
「……離れているよね?」
「……離れていません」
「離れてるじゃん……」
「一定の距離を保っているだけです……」
(またエルモアが俺から離れていく…… うぅ……)
「で、でもズーキさん? 流石にあの言い方はちょっと……」
「……ごめんなさい」
「全くのアホね」
「くっ」
「……本当に私に何もしなかったでしょうね?」
「……」
「ちょっと…… なんとか言いなさいよ……」
「……」
「あんたっ! 聞いてんのっ!?」
「……」
「こらっ! ちょっと聞きなさいっ! 私の声をっ!」
(こうやって俺が黙っていればスケベエルフのネピアは勝手に自滅するだろうぞ)
「え~ 何したん~?」
「ズーキさんがネッピーに膝枕してあげてたんだけど……」
「えっ!? ホント!? すご~い!」
「(でもね? その時にネッピーは意識を失っていて…… しかもズーキさんの身体が後ろ向きだったから何しているか分からなかったんだ)」
「(う~ん これは完全にまさぐられている案件さ~)」
「(やっぱり!? じゃあネッピーは成体のエルフとして認められちゃった存在なんだね)」
「(うん! おめでた!)」
次第に絶望がこみ上げてくるような顔をしているネピア。それとは裏腹に笑顔で祝福するようなクリちゃんとラヴ姉さん。そして絶妙な距離感のエルモア。俺たち五匹はそれぞれの思いを描きながら、エリエールさんとスコッティさんが待つロリフターズの実家で、夕飯を頂く為に並んで歩み始めた。