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第108話  寝台列車に乗ろう! その3



「列車の旅ってのもいいもんだな~」

「そうね~」

「本当です!」

「お酒が美味しく感じますね~」

「乾杯しよ! 乾杯!」

「「「「「かんぱ~い!!!!!」」」」」


 駅弁を食し、腹が膨れた頃に自ずと始まる宴。乗車してから飲み続けていたもの、本格的に飲み始めたのは先ほどだった。


「お母さん認めてくれるかな」

「大丈夫じゃない?」

「魔法具も手に入れたし、成長もしたから大丈夫って思うけど……」

「うぇ~い!」

「うぇ~い!」


 ラヴ姉さんを焚き付け、互いにアルコールを胃に落としていく。ラヴ姉さんの為に買い増しした酒を渡し飲み続けていく。


「もっとビール飲みたかったけど、温すぎるのもな~」

「あ~ 温いのが好きな人もいるけどね~」

「人それぞれだからな~」

「そんだね~」

「「うぇ~い!!」」


(清酒飲みたいな…… 漬物買ってくるべきだった……)


「ネピア~」

「なに~」

「もし良かったら清酒飲ませてくれないか?」

「どんぞ」

「かたじけない」

「あっ!? タロさん!タロさん!」


(くっ テキーラ補給部隊が俺の後方支援に徹して!?)


「はい! 漬物です!」

「エルモア買ったの!?」

「はい!」

「エルモア……」

「タロさん……」

「「(ギュッ!)」」


 俺とエルモアは見つめ続け互いに抱擁した。互いに互いをリスペクトしてフォローし合う存在。それが社会派紳士とロリフターズの関係性ともいえる。


「欲しかったですよね?」

「欲しかった」

「一瞬寂しそうな顔をしていましたので」

「それで気がついたのか……?」

「はい!」

「……エルモア」

「……タロさん」

「「(ギュッ!)」」


 俺とエルモアの関係は精霊の国へ来てから苦難の連続だった。その苦難を作成したのは紛れもなく俺だったのだが、乗り越えてくれたのはエルモア。


「タロさんライム本当にありがとうございます」

「いえいえ。こちらこそ漬物を購入しているとは露知らず、驚きと感謝の雨あられで御座います」

「漬物には清酒だって言ってましたから」

「覚えててくれたのか……」


 アドリード王国が首都アドリア。彼女達はせっせと糠漬けをひっくり返して、自家製の漬けものを漬け込んでいた。その糠漬けも今は船の上。


「私も漬物ほしい~」

「あぁ。清酒ありがとうなネピア」

「いっぱい飲んで! いっぱいあるから!」

「ありがとう。覇王も美味かったけどモコ殺しも良かったよな」

「摩訶不思議ってのが不思議な森の名産みたいよ~」

「……気になるけどお酒以外の効果がありそうで」

「ラヴ飲んでる~?」

「飲んでるぜ~い! (ブンブン!)」

「おわ!? ラヴ姉さん!? 魔法十手は止めて!? それ本当に恐いから!」

「え~?」

「お酒飲んでる時は危ないよラヴ?」

「は~い」


(電気ビリビリはしてなかったな……)


「あれ? 他のみんなは魔法具どこにあるの?」

「ん? あるよ?」

「ありますよ?」

「ありますね」

「え? エルモアのタクティカル魔法グローブはともかく、クリちゃんの魔法クロスレンチやネピアの……魔法杖マジカルロッド? それなんて結構な大きさだったろ?」

「そうね。だから仕舞ってあるのよ」

「どこに?」


 辺りを見回すがそれらしいのは見当たらない。固定されている上部ベットを覗いて見るもやはりない。


「目の見える所にはないわ」

「呼ばないと今ここにはありませんから」

「呼んだらちゃんと来ますよ」

「見えない? 呼ぶ?」

魔源マナジーの泉に間借りさせて貰ってるのよ」

「魔法の力の源ですね。それが湧き出ている泉があるんです」

「それはこことは違う存在でどちらかというと精霊よりですね」

「そこに置いてると」

「うん」

「はい」

「そうです」

「便利なもんだなぁ~ じゃあ荷物とかもそこに置けるのか?」

「コインロッカーとかレンタルボックスではないわね」

「魔法具はその場所に行けるんです」

「それで必要な時に戻ってきてもらうんですよ」

「その魔源マナジーの泉って所が魔法具の居場所なのか?」

「そっちの方が居心地はいいでしょうね」

「魔法具ですから」

「だからあまり魔法具って見かけないんですよ」

「なるほど」

「……じゃああたしの魔法十手くんは?」

「……」

「……」

「……」

「……」


 意識していなかったので分からないが、ラヴ姉さんの言い方じゃ手に入れてからずっと腰に差していたようにも思える。


「ま、まぁ、俺の魔法具である鍵もここにあるし……」

「ズーキくんも? 人間だからなのかな?」

「それもあるかもだけど、魔法具にだって変わり者はいるわ」

魔源マナジーの泉に飽きたのかもしれませんね」

「良かったねラヴ。ずっと一緒にいたいってさ」

「そうなのかい?」

「(……)」


(ラヴ姉さんが魔法十手に話しかけても返答はない。だが意思は感じるような「気」がする)


「ラヴ姉さんは前にも十手を腰に差していたから、常にあった方がいいんじゃないの?」

「確かに。二刀流だい!(シャキン!シャキン!)」

「「「「おぉ~」」」」

「酔っ払って魔法具出したら楽しそうね……」

「絶対トラブルの元だろ……」

「ちょっと……魅力的です……」

「エルモア!?」

「酔っ払いながらクロスレンチを愛で続けるのかぁ~ 工具触れてるとやる気になるもんね~」

「クリちゃんもか!?」


 危険な展開になりそうになるも、まだほろ酔いの状態だったのが功を奏す。自制心というブレーキを各々使用してくれ無事に停車する暴走エルフが三匹。


(俺の魔法具はただの鍵。しかも元の世界のごくごく一般的な鍵…… うぅ……)


「タロー?」

「どうしたネピア?」

「あのね? 実家の事なんだけど…… お願いがあるの……」

「どうした? 聞くぞ?」

「助かるわ。そのね? あまり私たちの事を話さないで欲しいのよ」

「分かった」

「すいませんタロさん」

「いいよ。今回の件については付き合うよ。俺も両親に自分の事を周りからあれこれ言われたら困るしな」

「……淫獣すぎるもんね」

「……今回は引いてやるよ」

「ごめんね」

「「「「 !? 」」」」

「な、なによ……」

「ね、ネピアが……」

「ネッピーが……」

「ズーキくんに謝ったど!」


(……今回だけだからな)


「余計な事は言わないように気をつけるよ」

「お願いね」

「お願いします」

「エルちゃんとネッピーのお母さん怒ったら恐いもんね~」

「そうなのかい?」

「……」

「……」


(黙られると余計恐く感じるな…… 少し話を聞いてみるか……)


「なぁ。例えばだけど、どういった事がマズいんだ?」

「……奴隷だった事は最優先事項で内緒にしておきたいわね」

「……精霊の国から勝手に出ていってしまった事も駄目ですね」

「本当にエルちゃんとネッピーが奴隷になってたなんて驚きだったよ」

「ごめんクリちゃん」

「ごめんねクリちゃん」

「でもエルっちとネピっちが奴隷だったって今思うと変だよね!」

「……確かに。精霊の国へ来てエルモアとネピアの事を色々知ったけど、黙って奴隷になるようなタマじゃないよな」

「……」

「……」

「……まぁいいよ。さっき言った通りで逆の立場だったら困るってのは事実だし、それは内緒にしておくよ。だけど、それじゃ俺とラヴ姉さんはどうやって紹介するんだ? 精霊の国にほとんどいないだろう人間だぞ?」

「……考えてなかった」

「お前にしては珍しいな」

「……どうしましょう」

「エルモアもか……」

「ズーキさんはネッピーと漫画読んだりしてたんですよね?」

「あぁ。元の世界でも漫画は一般的で、アドリアで読めたのは凄い嬉しかったよ」

「なら! 漫画好き! 精霊の国への旅!」

「なるほどね。実際アドリアで漫画に出会ったのは事実だから、それで精霊の国へ興味が湧いたと。じゃあラヴ姉さんは?」

「エルフ耳! 装備のラヴ姉さん!」

「エルフって誤魔化すのか……?」


 嬉しそうに耳をピコピコ動かすラヴ姉さん。そんな機能が付いているとは思いもせず、未体験の社会派紳士。今のところラヴ姉さんに買って貰った疑似エルフ耳は、フルオンの騒動から外している。


(買って貰ったけど、そのお金の元は俺なんだよな)


「まぁラヴ姉はどっちでもいいかな。その疑似エルフ耳付けてたら完全にエルフだしね」

「髪が赤くてもか?」

「染めてるエルフもいるから大丈夫よ」

「なんだかエルフに対する考え方が変わったよ」

「そう? じゃあもうちょっと詳細を決めていきましょうか」

「じゃあ詳細前にかんぱ~い!」

「「「「「 かんぱ~い!!!!! 」」」」」


 詳細を決めていくというのに、酒をあおり続ける五匹。だがこの話はまだ続いていく。








 申し訳ございません。昨日投稿分です。明日も投稿いたします。

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