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第一部 神帝編 第九章

超生物ちょうバイオの街のはずれにあるバーの主人はこの店の経営を任されて三十数年。

ヤクザやチンピラからも一目置かれる存在だった。

見た目が毛むくじゃらで巨漢、"ベアさん"と呼ばれている。

脛に傷のある男たちや娼婦たちの溜まり場だった。

夜11時になるとだいたい店の中では揉め事が起きる。

酒が回りきった時間だからだ。

翌日の朝には店の裏にあるドブ川にどちらか一方の死体が浮かぶのだった。


今晩もそろそろ何か起きるな。

ベアさんがそう思った矢先、店の扉が大きく開いて男が一人入ってきた。

扉から外の猛吹雪が入り込み騒がしかった店内が静まり返った。

明らかに店内の熱気に水が差されて入ってきた男の挙動に冷たい視線が集まった。

男は上等そうな厚いキルト地のマントから雪を払うとフードを取った。

見た目は人間で、20cmほどのまっすぐな角が金髪を掻き分け額から突き出していた。

日本人ではなかったがこの時代に言葉の壁はない。

マントの間からは高そうな服が見えた。

男はツカツカと通路を歩いてカウンター席に立った。

ベアさんは一瞥をくれて周りを見る。

【今晩の死体はコイツだな・・・】

男の周りを酔ったチンピラが取り囲んでいた。


4分後・・・

店内はメチャクチャになって超生物たちの死体がゴロゴロ転がっていた。

生きているものはベアさんを含め4名ほどだけだった。

そして角のある男は4分前と同じ場所で同じ姿勢で立っていた。

『注文を取らないのか?』

男の声にベアさんは我に返った。

『あ・・・はい。ご・・・ご注文は何に・・・?』

『熱いウォッカだ。』

震える手で、かなり長い時間をかけて男にウォッカを出す。

男は一気に空にすると代金の1000円札を出して折り紙を始めた。

『俺の後ろにある犯罪者の死体を換金所に持っていけば23万の賞金になる。

ただし俺の質問に答えることができたら・・・だ。』

『質問?』

男は写真を一枚取り出した。

『こいつの居場所を知っているか?』

写真に写っていたのはじん みかどの姿だった。


東京千代田区永田町にある国会議事堂の地下。

『ラスネイル。ぬしがしくじるとはな。』

畳4畳ほどの小さな茶室。

窓もなく小さな扉だけしかない。

何者かが茶をてている。

幾度となく繰り返したであろう無駄のない美しい所作であった。

『申し訳ございません。

ダイズ患者がおったとは不覚でありました。』

ラスネイル(に憑かれた男)は淡々とした口調で茶を点てている何者かに答えた。

『かの御お方の力の影響を受けまして再生に少々手間取っております。』

『首尾は?』

『彼奴もこの場所に向かっております故ゆるりとお待ちになるが宜しいでしょう。』

ラスネイルは差し出された茶椀を手に取った。

『お点前頂戴いたします。』

作法に従い茶を飲み干すと飲み口を指で拭って漆黒の茶碗をしげしげと眺める。

『黒楽大黒ですね。』

『そうだ。

ようやく手に入った。

これだからこの道楽は辞められぬ。』


あずま りょうは村から少し離れた墓地で妹の明美の墓の前で手を合わせていた。

全身ボロボロの包帯に長いコートを羽織った出で立ちである。

「行ってくるぞ・・・」

家から出かける時、了は必ずこの言葉を明美にかけていたのだった。

そして「今戻った!」そう言って必ず戻ってくる。

了はバイクにまたがるとエンジンを噴かして走り出した。

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