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第一部 神帝編 第十一章

永田町の首相官邸にSクラスの犯罪者が侵入した。

犯罪者とはテロリストじん みかどの事である。

帝の公式に記録される犯罪はおよそ300年ほど前に遡る。

強力な魔力を持ち、政府の要人や財界の著名人を殺害してきた。

今その標的は日本の首相なのだった。

官邸を警備する超生物のエキスパート達も帝の力の前に四散する。

その帝の足元を無数のエキスパート達の死体が転がっていた。

帝がいたのは首相のプライベートルームなのか洋風の広い部屋に高そうな飾り、

彫刻などが置かれている広い居間だった。

帝は抜き身の長剣を石床に突き刺して革作りの巨大なソファーにドッカと座り込んだ。

左手を掲げると部屋の片隅にあったワインセラーからワインが飛んできて左手に納まる。

ワインのコルクがゆっくりと抜けて空気がビンの中に入り込んだ。

帝はビンのまま一口飲んだ。

しばし時間が流れた。

もう一口飲もうとビンを持った左手を動かした時プライベートルームに男が入ってきた。

『そんな飲み方ではせっかくのロマネコンティが台無しというもの。』

帝の前に現れたのはラスネイルであった。

黒い上下のスーツに丸縁のメガネ。

しっかりと整えられた髪だが鋭い目つきが威嚇するように帝をギラギラと睨み付けた。

『肴が現れるまでと思ったが水みたいなもんだな。』

帝はラスネイルを見ないままワインボトルを斜めにしてこぼし始めた。

注ぎ口から流れ落ちる赤黒い液体は美しい直線となって床のタイルで広がった。

『ワインは繊細な心を映し出す鏡だ。

貴様のような下衆には理解できんだろうが・・・。』

ラスネイルの両手の爪が50cmほど伸びて鋭利な刃物と化した。

そして低いうなり声と共に帝に襲い掛かった。

帝は無表情のまま長剣を抜いて迎え撃った。

二人は空中で交差し立ち位置が逆になる。

ラスネイルは笑みをこぼした。

『このスピードならどうだ?』

再びラスネイルが激しい音を立てて地面を蹴って帝に襲い掛かった。

先ほどとは比べ物にならないスピードで二人の爪と剣が空中で激突した。

2合ほど斬り合って二人は離れる。

『更に速度を上げるぞ!!』

二人は目に留まらないほどの速度でぶつかり合った。

一瞬で何度も斬り合い部屋に突風が吹き荒れた。

壁から天井までヒビ割れ家具がめちゃくちゃに破壊される。

ドンッ!

ラスネイルの右腕が根元から切り落とされた。

『!!』

帝はラスネイルの元へ走り寄ると長剣で切り下ろす。

しかし鋭い音を立てて剣は弾かれた。

ラスネイルの切り落とされた右腕が再生していた。

再生された腕は元の形ではなく骨と筋だけになった醜い姿をしている。

『急激な再生は無理があるようだな。』

帝の斬撃をラスネイルはかろうじてかわす。

何度かの斬り合いの末、やがて壁際に追い込まれた。

『肉体を破壊してもお前はまた蘇るだろう。

そこで下準備をしてお前が来るのを待っていたのさ。』

帝が右手の平をラスネイルに向けて呪文を唱え始めた。

ラスネイルの立っていた床と壁に赤黒い液体が集まって二つの魔方陣が浮かび上がった。

『これは・・・先ほどのロマネコンティか!?』

ラスネイルの足元の魔方陣から茨が生えてラスネイルの足に絡み付いて離さない。

そして壁面の魔方陣は黒いモヤが生まれラスネイルは頭から吸い込まれ始めた。

ラスネイルの体は飴細工のように長く伸びて細くなり壁面の魔方陣の中心部に現れた真っ暗な闇の中へ伸びていった。

次の瞬間、足元の茨が千切れてラスネイルは掃除機に吸い込まれるように闇の中へ消え、同時に2つの魔方陣も消滅した。

『今夜は五粮液(ウーリィアンイェ)で口直しだな。』

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