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星詠み姫の選定  作者: 勇魚
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璃家の慶花

 紗幕が開いた途端、目を射るような紅が鮮明なものとなって視界に飛び込んでくる。宮仕えの女性は紅の衣を纏った妙齢の女性だった。まるで人形のように整った顔立ちをしているが表情もない。女性は数歩下がると深い礼をする。この礼の後、更紗は馬車から降りなければならない。


 ゆっくりと立ち上がる。まさか足まで震えているとは思わなかった。最初の一歩に力が入らず、二歩めに移れず途方に暮れる。あまりにも更紗が出てくるのが遅いからだろう。お付の女性は伺うように、そっと面を上げる。


 不味い。早く出なくちゃ。

 焦れば焦るほど、足に力が入らなくなる気がした。見かねたお付の女性が手を差し伸べてくれた。その手を頼りに馬車から降りた途端、取り巻く人々の多さと音に唖然とする。


 それは星詠み姫候補に送られる拍手喝采、国旗が描かれた布を振る音であった。

 最初の一礼以外、観衆の声に応える必要がないと言われていたが、もし応えろと指示されていたとしても無理だったろう。

 膝を折っての礼をどうにか終える。その次に待ち受けるのは、同じく観衆への礼を終えたもうひとりの星詠み姫候補、璃家りけ慶花けいかとの対面であった。 


 背面で同じ動作を終えた星詠み候補の少女と、ほぼ同時に向かい合う。

 紅の中に佇む、純白の衣を纏った少女がいた。


 星詠み姫だけは、祝いの紅も自粛の黒も身に纏わない。何色にも染まらない純白のみ赦される。候補であるうちは強制されないが、星詠み姫候補お披露目では自然と純白のみを纏うのが慣習となっていた。


 髪は艶やかな漆黒。背を覆う長く緩やかに波打つ髪。肌も身に纏った絹に勝る白さだった。思っていたよりも背が高く、その立ち姿は凛とした気高さが漂う。


 彼女が璃家りけ慶花けいか……。


 綺麗な人だと、遠目でもわかるくらいだ。近付くにつれ、同じ人間でもこうも違うのかと溜息が出そうになるのを、ぐっと飲み下した。

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