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52.王の役目とその感情

 〜王の役目とその感情〜


流石に姿をバラすわけにもいかないので、スペードはジョーカーに包括してもらっていた。


「アリス、これからクイーンの部屋に向かうが・・・・ちゃんと付いて来い」


スペードinジョーカー。

それはスペードの意志はあるものの、喋り方もジョーカー、外見もジョーカーの色になる。

本当に誰だか見分けが付かなくなりそうだ。


「えぇ、じゃ行きましょう」


「スペードの部下に見つかると色々都合が悪い。だから見つからないよう、最善の努力はするつもりだ」


と、ジョーカーは目配せしながら言った。

けれど突然、「そんな必要はない」とここにいなかったはずの誰かが言う。

そこにいたのはキングだった。

いつやって来たのかなんて分からないが、こちらに歩み寄ってきていた。


「キング・・・どうして・・・」


キングは一瞬アリスに視線を向けるが、すぐにジョーカーに視線を移す。

そこにいるキングは、見たことの無いような殺気を纏っていた。


「どうして?・・・分からないか、アリス。

 ここは俺の城。反響の国の中心部であり、民の拠り所である城だ。

 ここで黄昏の国の武官と我が国の兵士が戦ってみろ。

 平和に暮らしていた民が怯える。俺は国のトップにたつ皇帝として、民を怯えさせる訳にはいかない。

 だから、アリスといえども・・・騒ぎの中心ならば、刀を向ける覚悟もある」


淡々とした、けれどしっかりとした口調でキングは告げた。


「ッ・・・!」


アリスが横目でジョーカーを見ると、ジョーカーは眉を寄せ、唇を噛んでいた。

こぶしを握り締め、目を伏せて。


「(ジョーカー・・・?)」


ジョーカーは苛立ちを感じていた。

それも全部、スペードのせいだ。

包括をしているときは、スペードの思考などすべて自分に伝わる。

そして今、スペードの苛立ちや苦しみという感情がジョーカーに流れ伝わってしまう。


この苛立ちは自分の感情じゃ、ない。

スペードの意思だ。


あぁ、とジョーカーは思う。

悔しいのだと。スペードのこの感情は悔しさからきているのだと分かった。


近い歳で、国を治めているという同じ立場に立つ者同士。

だが、スペードとキングには決定的な差があった。


それは、感情だ。

スペードはアリスを助けに国をハートに任せ、この国にきた。

けれど、キングはアリスへの想いをおさえて、国のために刃を向けることもいとわない。

国のトップに立つ者としては、どちらが正しいのかは明白。


一国の主は、その国、その民、そしてその国が長い歴史をかけて作り上げた誇りをも背負う。


要するに、スペードの行為は、軽率そのもの。

いくらジョーカーの力あったとしても、その命、落としていたかもしれないのだ。


ジョーカーは心配そうに自分を見るアリスにかぶりを振ってから、もう一度キングと対峙する。


「だが、貴様も知っているんだろう。貴様の姉であるクイーンのしていること全て。

 黒魔術に飲み込まれていることも、貴様に対する姉の思いも、だ」


その言葉にキングはわずかに反応し、肩を一瞬揺らす。

キングは聡い。だから、この騒動の原因についても気づいているのだろう。


キングは口をつぐんだが、ジョーカーはその沈黙を肯定ととり、話を続けた


「なら、何故姉を止めない?姉を止めることを、弟である貴様ならできただろう。

 ・・・確かに、敵国の武官が戦っていることも危険であり、それを止めることも重要だ。

 しかし民にとっては、自国の女皇が黒魔術に飲み込まれていることの方がよっぽど恐ろしいのではないか?

 よっぽど危険だと思わないのか?」


「・・・・そうかもしれない。いや、そうだろう。だが、俺には姉を止める力が無い。それならば」


姉でなく、敵国の武官の排除の方が良い。

自分が我慢さえすれば、民に姉の手が及ぶことはないのだから。


「歯痒いな」


ジョーカーは小さくそう呟いた。


キングもまた、何もできない自分に苛立ちを感じているのだと感じた。

王は国や国民のためにできることは多くある。

けれど、それはあくまで王としてのこと。

一人の人間としてできることはあまりにも少ない。


大きな権力を持つ者は、同等に大きな責任を問われるのだ。

民を気にかけず滅んだ王はいくらでもいる。

反響の国も以前は王政だったが、王が民のことをかえりみなかったため、今のような帝政になった。

責任という鎖は、とてつもなく重い。


「アリス、ここを去れ」


「・・・できないわ」


「アリス。頼むからここを去れ。そうしなければ、俺は、お前を、殺すかもしれない」


まるで吐き出すように、言われたその言葉。

「殺す」というその言葉が、妙に響いて聞こえた。

皆さん、お久しブリーフです。

(いきなり下品ですんません)


学校卒業、そしてまた入学いたしました〜。

環境の変化についていけず大変ですが

これからも頑張って更新していくので応援宜しくお願いします!


どうでもいいのですが、今回のサブタイトル、かったいですね。

アリスって何歳向けの話なんでしょうか。

何歳から何歳までが楽しめるのか、ちょっとした疑問です。


では、読んでくださり、ありがとうございました。

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