5.卵男とチェシャー猫 後編
〜卵男とチェシャー猫3〜
「でさでさー、アリス何か命令はぁ?してくれないのー?」
「命令って言われても・・・」
しばらくどうしようかと悩むが、やがて思い付いたように手を叩いた。
「時計兎とハンプティーが探しているのはあなたなんでしょう?
だったら、時計兎とハンプティーと合流したいし、2人を探してほしいな」
そして、できれば連れて行くか、連れてきてほしいとも思う。
「ムゥー・・・ほかの男のためっているのが気に入らないけどぉ。
しょうがないなぁー、連れて行ってあげるよォ。ちょっとだけ、ガマンしてねぇ」
そう言うが早いがひょいっとチェシャ猫はアリスを抱きかかえる。
正直、恥ずかしい格好で。
(こ、これってお姫様抱っこ・・・!?は、恥ずかしい)
「でもでも、どうやって見付けるの?いくらなんでもわからないでしょ?」
アリスは恥ずかしさを紛らわすためにチェシャ猫にとにかく話し掛けた。
「オレは猫だかんねぇ、耳とか鼻はいいんだよっ」
「鼻が良いのは犬なんじゃ・・・」
突然ひょいとチェシャ猫は樹の枝の上にアリスをお姫様抱っこしたまま飛び乗った。
「なっ何をして・・・!?」
「じゃあ行くよぉ?」
「えっ行くっ?」
チェシャ猫がそうニッコリと笑い、つられて(引きつり)笑いをしてしまう。
「Let’GOー!!」
「え、えぇぇぇえぇ!?いやぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
下ろしてぇえぇぇぇぇぇ!」
猛スピードでチェシャ猫は樹の枝を飛び乗りながら駈け抜ける。
アリスは落ちるかもしれないという怖さから叫んで、叫んで、叫んだ。
「何か妙な音がすると思いません?」
一方こちらは、チェシャ猫を探していた時計兎たちだ。
チェシャ猫と同じ獣人の時計兎はハンプティーにそう話しかけた。
「妙、というか変、というか・・・叫び声のようなものが聞こえる気がするのですが」
「さぁ?君は耳がいいから。ハァ・・全く、チェシャ猫はどこにいるのやら・・・・」
ハンプティーはと言って相手にしなかった。しかし
段々、その音が人間の耳でも聞えるくらいに近くなった。
「いっぃいぃぃやぁぁぁあぁっぁ!!!!下ろしてぇえ!!おちっ落ちるっ!!!」
この声はまさか、と2人が思ったと同時に音源と青年が現れた。
「アリスッ?」
「チェシャ猫っ?」
上からトンっと降りてきた2人に、驚いたような呆れたような声を上げた。
「バカー!!チェシャ猫!!樹の枝の上を走るなんて!!」
「大丈夫だってェ。アリス軽いしさァ」
「そういう問題じゃないでしょう!!」
そう言い争いをされて、時計兎とハンプティーは無視された。
内輪モメ。どうやら2人には気付いていないようだ。
「もうやめてよ!?今後からずっと、永久に!」
そうアリスが振り向いたときに
「あ、時計兎、ハンプティー?いた、んだ・・・」
アリスは恥ずかしさから顔を朱色に染める。
一方ハンパティーと時計兎はやっと気づいて貰え、安堵したかのような表情をした。