41.メイドの口調とアリスの確答
〜メイドの口調とアリスの確答〜
逃げながら、アリスは考えていた。
―――本当に、それでいいの?
自分だけ、自分1人だけが逃げていいのか。
何故ならこの騒ぎを起こす原因になったのは自分。なのに、当事者が逃げるだなんて卑怯だ。
それに今アリスが逃げたとしてもまたキングは同じ事をするかもれない。
そうなったら同じことの繰り返し。終わり無きループ。まるでメビウスの輪みたいだ。
アリスは考えをまとめると、足を止めた。そして逆方向へ走り出す。
逃げさせてくれたビショップとクローバーには悪いけれど、ここで決着をつけておかないと駄目になる。
反響の国も、黄昏の国も、そして自分たちも。
とりあえず、アリスは自分専用の部屋と言われていた場所に行くことにした。
何ができるかなんて分からない。部屋に行って、何をするかも分からない。
ただ、最初この国に来たとき初めて居た場所が、また何かの始まりである気がしてならなかったのだ。
人々の流れに逆らい、走る。しかしその途中。
「アリス!!」
誰かにそう呼び止められた。そろりとアリスは声の方へ振り返る。
するとそこにいたのはメイドのリデルだった。
リデルはつかつかと歩みより、アリスに詰め寄る。
「アリス!何してるの!?早く避難しないと!」
「え、あの、え?リ、リデル・・・その・・・敬語はどうしたの?」
アリスは何よりリデルの喋り方に驚いていた。前までならきっと
『アリスさま!何しているのですか!?早く避難してください!』
と言っただろうに。なぜ、今は違うのか。
「そんなことはどうでもいいわ。あれはいわゆる猫かぶり状態なだけ。それで?何故避難しないの?」
「何故って・・・―――」
何故残りたいのか。改めて他人からぶつけられた疑問。
アリスは静かに目を瞑る。
助けられてからほんの一ヶ月しか時は経っていない。しかし、色々なことがあった。
そんな中で何度も迷い、何度もどっちつかずに思った。けれど、もう。
「もう、迷いは無いわ」
すっと目を開き、リデルの瞳をしっかりと見つめる。
真剣に、意思のある目で。アリスの心には、もう靄は無かった。
澄んだ、強い意志のある、瞳。
「全て、私が起こしたことよ。決着を着けるべきだから、私は、逃げるわけにはいかないわ」
それを聞くと、リデルは優しげに微笑んだ。
(あれ?)
アリスは首を傾げる。リデルの微笑した顔が、誰かに似ていた。
リデルの顔、ではなく、どこかで見たことのある表情。
「そう言ってくれて良かったわ。アリス、着いてきて。アリスの部屋へ行きましょう。
私、あなたに言わないといけないことがあるの。誰にも聞かれたくないし」
アリスは先ほどのリデルの顔に疑問を覚えつつも大人しくリデルについて行った。
「あの、どうして敬語止めたの?」
何となくアリスは聞いてみた。するとリデルは「あー・・・」と言葉を紡ぐ。
「切羽詰った状態だったから。本当は最後まであの喋り方を貫こうと思ったのだけれど・・・」
「最後・・・?最後って、何?」
アリスは少し、不安に駆られた。
リデルの言った最後。それは何を意味する?
この騒ぎが終わる時がくるまで、という意味だろうか。
リデルはというと否定するかのように頭を振る。
「何でもないわ。それより、ほらはや・・・・!?」
不意に、リデルは言葉を途切れさせた。
アリスは頭にクエスチョンマークを浮かべるが、すぐにその理由が分かった。
殺気。それも禍禍しいほどの。
「避けて!!」
アリスは直感的に、そう叫んでいた。
どうでもいいですが、最近は修正週間です。
最初のころの話が物凄く見るも恥ずかしいほどの
書き方で、おまけに誤字脱字、余計な空白などが
多いにありましたので修正しています。
話自体は変わっていないので安心してください。
ちなみにキャラクター(一部除く)の年齢も少し上がりました。
あとがき登場人物紹介に修正年齢が書きかえられています。