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37.赤い夢と止まらぬ歯車

 〜赤い夢と止まらぬ歯車1〜


「アリス嬢・・・ドレスは目立つ上に動きにくかろう?他の服に着替えた方が良い」


確かにドレスはかさばるので動きづらい。

動きやすく、その格好で歩いていても不審がられない服、メイド服を着ることにした。



「着られたか?」


「えぇ、まぁ」


侍女の服に着替え、ビショップに着いていく。するとその途中、


「ビショップ待て。どこへ行くつもりだ?」


と、声をかけられた。ビショップは軽く舌打ちしてその人物に向き直る。


「ナイトか・・・・何処へ行こうとも勝手であろう?」


ナイトは訝しげにビショップを見て、メイドに扮したアリスを見た。

アリスは一瞬ひやっとしたが、目には緑のカラーコンタクトをしているし、

髪は1つにおだんごにまとめている。簡単なメイクだって施している。

我ながら上手く化けたとアリスは思ったほどだ。きっとばれてはいない。


「その娘は?」


ナイトはビショップに対してこう聞いた。

その娘・・・つまりメイド姿のアリスのことを言っているのだ。


「メイドであるが」


「それくらい見りゃ分かる。そうじゃなくて、そのメイドはお前の専属メイドなのか?」


如何いかにも。今自室の戻るので付いて来て貰っているだけだ」


「へぇ」とナイトは好奇の目でアリスを見る。その視線は先ほどと違い、疑うようなもののたぐいではなく

ただ単にメイドに対する純粋な好奇心だった。やがてアリスから視線を外し


「しかし自室には戻れないぞ、ビショップ。キングから呼び出しだ」


こう言った。刹那、ビショップの眉がピクリと動く。ビショップは息をはきつつアリスを見る。


結局アリスはビショップの自室に、ビショップはキングの部屋に行くことになってしまった。

別行動は遠慮したかったが致し方ない。ビショップが戻ってくるまでアリスは部屋で待機状態だ。


一方ビショップはというとキングの部屋前にいた。ノックをして中に入る。

すると・・・―――


「ビショップ。良く来てくれたな」


キングは、キングが好んで着る狩時の服を纏っていた。

細やかな刺繍がされたこの服は動きやすく、加えて威厳ある皇族らしさを漂わせている。


「キング、呼び出した理由とは一体・・・?」


ビショップは何故、キングが今日狩をする訳でも無いのにその服を着ているのか疑問に思いつつも本題を尋ねた。

キングは窓の外を見ながら、ビショップ、ナイト、そしてルークに言う。


「大切なものを取り戻すには、大切なものの大切なモノを壊さなければならないか」


言う、というより独り言のように呟かれた言葉。

キングは何を思って、何を想い、こうひとりごちたのか。言わずとも分かる。

アリスだ。

アリスが前のように忽然と姿を消したとき、キングは何もしなかった。

何もしようとはせず、ただ自室にこもって死人のように、眠った。

それも1日だけであったが、その目を誰とも合わせようとはしなくなっていた。


「もう、奴等は来る。姉上も、動く。三人とも、覚悟しておいた方がいい」


ビショップは王の補佐。キングの言ってることもいつもなら誰よりも理解するが、

この時ばかりはキングが何を言いたいか明瞭に分かりはしなかった。

ただ、自分のクイーンのしていることを知っているかもしれないという香りを匂わせただけ。


――キング、とビショップは呼びかけようとした、が、次の瞬間。


ドゴォンと低い地響きがした。

ルークもナイトもビショップも驚きに駆られ、地響きの原因を探そうと窓の外を見た。

だが答えを見つけ出すより先にキングは口を開く。


「悪夢のお茶会、か。・・・・赤く濡れたユメを見るのは誰だろうな」


そうしてキングの目線を辿ると、いるはずのないナイトメア、クローバー、ダイヤが庭に立っていた。

兵士に囲まれている。それはキングが動かす兵士でなく、クイーンの兵士だった。

歯車が、止まらぬことを知らないように、より強く速く加速しだした。



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