30.王の記憶と好きな理由 中編
〜王の記憶と好きな理由2〜
国を何より思うアリスは迷い、そして頷いた。
キングの妻になると。
キングはアリスの心を利用した。
例えそれが利己的だとしても、アリスは了承した。
それは一番楽な道への逃げなのに。
「まぁ、どうしてか君はしばらく行方不明になった・・・
それがアリスが黄昏の国へ戻る十日前のことだ」
お か し い 。
どういうことのなのだ。
アリスは結婚に応じた。だが、何故か国から逃げた。
黄昏の国を想う、アリスにしては不思議な行動。
そして、反響の国から黄昏の国へ行くのは約二日半。
残った八日間何をしていた?
おまけに、反響の国の民が国からアリスらしき人物を見たのは、
アリスが行方不明になってから八日後だ。
一体これはどういうことなのだろう。
どこかで、矛盾が発生している。
キングもアリスも考え込むように目を伏せる。
しかしこうやって考え込んでも、わかるのは記憶を無くす前のアリス、
否、“アリスの以前の記憶”のみだ。
アリスはやがて深く息をつくと、話を逸らす。
「あの、キングはどうして私を好きに・・・?」
それは少しばかり興味のある話だった。
だからついでに、と聞いてみた。
キングは顔をあげ、アリスを正面から見る。
「ふっ」と微笑し、アリスの隣に腰掛けた。
アリスが座っているベッドが二人分の体重を受け、小さくギシと鳴る。
「これは、以前もアリスに話したことのある話だ・・・」
そう切り出し、ゆっくりとアリスに語り始めた。
アリスと出会う以前のキングは冷血で、操り人形のようだった。
今のように感情豊かではない。淡々として役者のように理想の王を演じるだけの。
ある時、国土拡大のために目をつけた、白雪の町。
できる限り、穏やかに済まそうと思っていたが、そうはいかない。
当たり前だが、黄昏の国は使者を送りつけ抗議した。
直接話すため、謁見の場に引き出された使者。
誰もがその人物に目を奪われた。
金色のやわらかな髪に、空のように碧く青く蒼い吸い込まれそうな瞳。
使者は女だった。てっきり男だと思っていた周囲が驚きに駆られるのが
手にとるようにわかる。
女は慣れたように息をつくと、跪き、こう言った。
「初めまして。黄昏の国の使者、
アリス=“リデル”です」
ついに三十話突破しました!!
記念にまた番外編でも書こうと思います!!
それでは
The thanks that are great to reading people!
(読んでくれる皆様に多大な感謝を!)