20.初出兵とアリスの溜息
〜初出兵とアリスの溜息〜
色々なことがあった。
ハートとの出会い。スペードとの会話。ハンプティーの秘密。
「んぅー」
気だるさを感じ、朝なのだろうが起きずにアリスはベッドで目を瞑る。
(ずっとこのまま眠っていたい)
しかし一度目を覚まし、意識が覚醒仕切っている状態で、二度寝はできなかった。
仕方なく重い瞼を開ける。
「ひぃっ!」
アリスは女性らしさの欠片も無い悲鳴を短く上げた。
「チェ・・シャ猫」
チェシャ猫が同じベッドに入り、くぅくぅとさぞ気持ちが良さそうな
寝息をたてていた。顔はとても幸せそうだ。
本当に、いつの間に入ってきたのだろう。
アリスは息を吸い込み、チェシャ猫の名前をを呼びかけた。
しかし、全く持って起きないので体を激しく揺さぶる。
すると、当事者は大きく伸びをして起き上がる。
「うぅん・・・うるさいなァ。・・・あー、アリス。おはよう」
「えぇ、おはよう。・・・・・じゃっなーい!ななななんっで!
入ってきて・・!?い、何時の間にっ!!」
慌てるアリスを尻目に、チェシャ猫はニヤリと笑んだ。
「えぇっと、アリスを起こしに来たんだけどぉ
オレも眠くなっちゃってェ」
アリスは呆れて物も言えない。
「アリスの香りだァ」と喜ぶチェシャ猫に対し、アリスは頭を抱えたくなった。
偶然と言いたいが、絶対故意でチェシャ猫はベッドに入ってきたに違いない。
アリスは本日、何度吐いたかわからない溜息を吐き出した。
あれから数日。
今日が反響の国との戦争の始まり。
そしてアリスたちナイトメアの出兵日だ。
いつものお気に入りの服に着替えたアリスは、城門へと急ぐ。
そこにはもうナイトメアは集まっていて(チェシャ猫とアリスは除く)
馬に乗れないアリスのために馬車があった。
馬車にスッと乗り込むと、アリスはゆっくりと深呼吸する。
「緊張する、わね」
「アリス、リラックスしろ。今日まで俺と修行したから
殺られることは無いはずだ」
「戦場では絶対僕たちと離れないようにね、アリス?」
そうだ。アリスも何もしなかった訳ではない。
帽子屋と手合わせしたし、ハンプティーと何度も作戦確認したのだ。
だから、確信は無いが大丈夫だろう。
未だ、ドッドッと激しく飛び跳ねる心臓を落ち着ける。
胸に触れ、押さえ込むように。
「じゃあ行きますよ?」
馬の手綱を持つ時計兎に肯定の返事を返すとゆっくりと動き出す。
段々と早くなり、城が離れていく。
今、馬車と共に運命は動き出した。
戦場へと向かって。