2.アリスと時計白兎 後編
〜アリスと時計白兎2〜
(Sっていったわよね?まずい。この人、変人・・・・?)
アリスは青年の手を振りほどこうとするが
しっかりと手首を掴まれていて、青年は離そうとしない。
「(しょうがない。離してくれないし、耳引っ張った私も悪いし)
あの、じゃあこのまま聞くわ。ここはどこ?私、何者?」
諦めたアリスにフッと笑んでから一呼吸おいて話始めた。
「ここは“黄昏の国”と呼ばれる国の草原です。
アリス、あなたはこの国の武官・・・すなわち軍人のようなものです。
私もあなたと同じ武官で、あ、名前は“時計白兎”といいます。
時計兎・・と呼んでください」
今更だがそう自己紹介をした。
アリスは少しだけ首をかしげ、青年の顔を覗き込む。
「時計兎?それが名前?」
「はい。変わった名前でしょう?
私はこの名前が嫌いですけど、あなたのその可愛い声で呼ばれるなら好きになれますね」
アリスは後半部分を聞かなかったことにして話を続けてとうながす。
「それで、この国には王であるスペード。
スペードの妹で、女王であるハート。
王の近衛であるクローバー。
王の補佐であるダイヤ、がいます」
少し違和感を感じアリスは時計兎に尋ねる。
「普通なら女王は王の妃なんじゃ?」
「普通なら、でしょう?ここは普通じゃないんですよ」
サラリとそう言ってのけられた。
時計兎はそれで、と話を続ける。
「この黄昏の国の隣国、反響の国。
私たちの国と反響の国の間にある“白雪の町”の所有権利をめぐって
敵対し始めたのです。白雪の町は元々こちらの領地なんですが
あちらの国に近いせいか、反響の国の民が多く白雪の町に移住していまして。
反響の国が権利はこっちだ。と主張してきたんですよ。
アリス、あなたは反響の国への使者役。流石、アリスと言いましょうか。
滅茶苦茶死ねこの糞野郎っていうくらいイラつくんですけど。
反響の国のキングがあなたに惚れたそうです」
「え、惚れた?・・・・・・・・いたっ」
忌々しげに時計兎は自分のこぶしに力をいれる。
そしてアリスの手首を握っていた手も強く握ってしまう。
痛さで顔を歪ませるアリスを見て
「大丈夫ですか?私はアリスの笑顔が好きですけど、アリスはどんな顔も似合いますね」
と笑ってみせた。
アリスは少し身を引きつつも話に耳を傾ける。
「ま、そこでアリスは誘拐されてしまったんです。
いえ、監禁というほうが正しいでしょうが。私達はどうしようか悩んだんですけど」
そこまでいうと、時計兎は胸ポケットから手紙を出した。
「これ。あなたが書いたんですよ。
今日この時間帯にここへ、反響の国から脱出して帰ってくると。
そこで、私が迎えに来たと言うわけです。おそらくはその途中で
頭を打つか何かして記憶が無くなったのだと思います」
アリスは手紙をまじまじと見つめる。
確かに「アリスより」と書いてある以上は時計兎のことを信じよう。
今からどうしようかと思考をめぐらせていると突然手の甲に生暖かいものが触れた。
「・・・っ!?何をっ・・・」
時計兎がアリスの甲に口付けしていたのだ。
「・・嬉しかったんですよ、アリス。アリスはこの手紙を他の誰にも届けていなかった。
私だけに届けていた。それがとても嬉しかったんです」
そう言われると、アリスも怒ることはできない。
さっきまで少し引き気味だったが、アリスは少し信用してもいい気がした。
「時計兎・・・あなたのことを信用するわ」
「ありがとうございます。安心してください。
反響の追っ手が来たとしても全て返り討ちにしますからね。皆殺し、ですよ?アリス」
前言撤回。
アリスは少し後退するようにじりじりと後ろへ下がったのだった。
登場人物紹介
時計白兎(20歳)
瞳:濃い青色 髪:蒼色
武器:鞭
特技・・・お茶を淹れること
趣味・・・読書
備考・・・獣人で兎。
黄昏の国の武官。
アリスが好きで、アリスにちょっかい出す奴はMI・NA・GO・RO・SHI☆
チェシャ猫が大嫌い。
S。