11.ハート女王とジャック 前編
遅くなりましてすいません。
では新話をどうぞ〜。
〜ハート女王とジャック1〜
「ご、ご愁傷さまで・・・」
アリスと目の前にいる屍と化した馬に哀れみの目を向けた。
無理もない。城下町までぶっ続けで走らされたのだから。
馬をこのようにした犯人たちは城へ行っている。
ここで待っているように言われ、ずぅっと待っているのだ。
またまたアリスは置いてけぼりになった。
「馬も大変よね。私も大変だけど・・・」
苦笑しながら、やんわりと馬の鬣を撫でる。
栗毛の馬は唯一の安らぎにうっとりと、気持ち良さそうに目を閉じた。
ふわっと暖かく優しい風が吹く。
その風は春独特の花の香りがする。
暖かな春の陽を感じ、次第にウトウトと眠りの渦に沈み込んでいった。
この世の全てはあたしのもの。
あたしが願えば何でも手に入るの。
あたしに逆らうものは全て・・・・壊しちゃえばいいんだから。
「やっぱり、城下町は華やかで良いわね」
あたしはとっても有名人。何たって、黄昏の国の頂点なんだもの。
有名人であるあたしはフードを被り、城下町へお忍び中。
ドンッ
「キャッ・・・」
「うおっ!?わわわ、譲ちゃんすまねぇな」
何この男。かっこ良くもないし、価値無しね。
そう思ってあたしはパンパンとスカートを叩く
ベチョッと音がして手に何かが付いたわ。
「やっやだ!ケチャップ!!」
男とぶつかった時に相手が持っていた食べ物のケチャップが
スカートに付いていたのよ。
「うわぁー・・・悪いなぁ、本当にごめんよ」
「・・・ない」
「え?」
「許さない!!!あんたなんて死刑にしてやるわ!!!!!」
このワンピースは、あたしが城下町へお忍びで出てもわからないようにと
自分で必死に作ったものだったのに・・・!
「はぁ!?」
素っ頓狂な声を男があげる。なぜ死刑?と言う表情だ。
「ちょっと・・・あの人“死刑”って頭おかしくない?」
「クスクス、確かにそうかも」
ざわつきと共に嘲りが聞える。ムカつくムカつくムカつくわ!!!!!
ただでさえイライラしているっていうのにね。
「何よ!!今笑った奴も死刑にしてやるわよ!」
こんな高位のあたしを嘲笑するなんて、許されると思っているのかしら?
残念、あの人たちの生命はもう終わり。
「あたしの名前は何だと思う?この国の女王ハートよ」
フフンと笑みながらフードをとる。笑ってた人達の顔が一気に真っ青。
クス、面白いわ、最高よ。
「は、ハート女王さ・・ま・・・うっわぁあぁぁ!俺、本当に殺されちまう!!」
あたしに逆らった奴らは全員打ち首にしてやったわ。
キングクラスのスペード兄様や、エースクラスのダイヤや、
ジャッククラスのクローバーに「やめろ」と言われるけれど気にしない。
何でかって、黄昏の国は王より女王の方が権力が強いから。
王は他国との交渉のための御飾り。女王は自国では何でもし放題なんだから!!!
「いやぁあ!ハート女王様許してください!!」
笑った奴らもそう言って懇願してくる。
「さよなら、今の家に家族や友人たちに別れを言ったほうがいいわよ?」
そうよ、そう。この世の全てはあたしのもの。
人の生命でさえもね。
「ま、待って!」
そこに静止の声がかかる。
「殺すなんてやりすぎよ!相手も謝ったじゃない!」
あぁ、こんなあたしでも一番大っ嫌いな最悪女。
名前はアリス。初恋だったハンプティーの恋心を奪った
口うるさい凡人武官。
監禁されてたくせにどうしてまたここへ戻ってきたのよ?
登場人物紹介
ハート(16歳)
瞳:紫色 髪:金色
武器:ハート型宝石の付いたステッキ
特技・・・メイク
趣味・・・宝石集めorドレス集め
備考・・・左頬にハートマーク(紅色)がある。
黄昏の国の女王
王であるスペードとは兄妹。
自分本位で我侭。
露出的なドレスを好み、美少女。