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1.アリスと時計白兎 前編

〜序〜


今日は何をしよう。あぁ、そうだ。


机に大量におかれた手紙の山をあさる。

その中から細く綺麗な字で書かれた1通の便りを手にとった。


「やっと会える、なんて・・・―――」


内容を再確認し、そう小さく呟いた。


嗚呼、何度、どれだけ待ったであろうか。

この日がやってくるのをどれだけ――――。


「行きましょうか」


そっと上着を着ると外へと足を進めた。

春になってきたので外は暖かい。


片眼鏡をかけた青年は蒼色の髪を小さく揺らしながら足早にかけていった。




 〜アリスと時計白兎1〜


ゆらーり、ゆらーり・・・ふわふわと。

浮かんでいるような感覚から、穴に堕ちるかのような感覚へ・・・

手足も身体も動かない。

高いところから落とされたような、そんな感覚。

・・・少しずつ手足の感覚が戻ってきた。

指先、手の平からわかる地面。

少々チクチクする。

目は閉じているものの、眩しいように感じた。


「っ・・・」


おそるおそる目を開ける。

ここは一面の草原だった。

さっきのチクチクするものは芝生で、春の、匂いがした。


「ここ、どこ?」


金色の宝石のような髪をゆっくりと掻き揚げる。

日光を受けてキラキラと輝く。髪は少しウェーブになっていてふんわりと波打っている。


「私・・・私の・・・名前は、アリス」


何もわからなった。ここがどこだか。

自分自身のことさえも。わかるのは“アリス”という自分の名前だけだった。


「何で・・何も思い出せないの?」


何も何も思い出せない。

思い出そうとしても頭痛がアリスを襲う。


「アリスッ」


不意に後ろから声がした。


「え?・・・・わっ」


振り向くと同時に誰かに抱きしめられていた。

気が付くと男性特有のがっちりとした腕の中。


「会いたかったです、アリス」


深海のような青い瞳と空のような蒼い髪。

そして白い兎の耳と片眼鏡、首にかけた時計。

おまけに端麗な顔立ち。

どうして美形な青年に抱きしめられているのだろう。


「あっうっうえ?」


思わず変な声をあげるアリスに、青年は心配そうに覗き込む。


「どこか打ったり怪我したりしていないですか?」


「あっあの!私の事知っているの?というかあなた誰」


アリスがそう言うと青年は傷ついたような表情を見せた。


「私が誰かわからないんですか?」


ポツリと青年は訊ねた。アリスはコクリと頷いて、言う。


「え、えぇ。自分の名前はわかるけど・・・私が何者なのか、ここがどこなのか全て」


「と、いうことは・・・記憶喪失」


青年は誰に言うわけでもなくそう呟く。

記憶喪失。それは記憶をくすこと。


だが、今のアリスにはそれ以上に気になることがある。


「痛っ。アリスなにしてるんですか?」


アリスはどうしてもこらえきれなかった。

少々ピクリと動く白い兎耳が気になって気になって仕方が無い。

つい、引っ張ってしまった。


「え、えっと痛い・・・?」


アリスが言うとクスリと青年は笑って、引っ張っているアリスの細く白い手首を握る。


「はい、痛いです。・・私は正直、痛い思いをするより痛い思いをさせるほうが好きなんです」


にっこりとした微笑に黒いものが見える。


「あ、あ、あなたもしかして・・・・・?」


「はい。どちらかというとSです」


100万ドルの笑顔、というのはこのような表情だろうか。

嬉々とした様子でアリスに笑いかける。

一方、アリスは表情を凍り付かせた。


登場人物紹介



主人公・アリス(17歳)


瞳:蒼色  髪:淡い金髪

武器:ダガーorトンファー

特技・・・家事全般

趣味・・・お菓子作り

備考・・・美人で何かと美形兼変人に縁がある。


黄昏の国の女武官で、強いと評判。

よく美形兼変人に振りまわされる生活を送っている。


反響の国のキングから求婚され(しかも監禁)

逃げ出したときに記憶を失う。

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