プロローグ
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氏名 天宮香奈 二×××年 九月一八日生まれ 二十一歳 性別 女性
身長 百五十八センチメートル 体重 四十九・五キログラム
十歳で超能力が目覚め、隔離施設で十一年間過ごすも、目立った成果はない。
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「……以上が、天宮香奈のプロフィールだ」
一枚しかない紙に目を通し、デスクに置く。
随分と薄っぺらいな、と思ったが、あえて言わなかった。
「この者が、明日からこのPSI特別捜査部に配属する。そして君のバディ(相棒)だ」
二人しかいないのに、やけに広い部屋。あるのはデスクとイスと本棚。
「橘君、何か質問は」
「……いいえ」
男性でクセのない、黒髪のストレート。
前髪が少しだけ伸びており、目にかかっている。
「そうか。では、行ってよろしい」
そう言ったのは、大きなイスに座っている人物。この人物も男性であり、白髪の髪でかなり年をとっているが、鋭い目つきと雰囲気がそう感じさせない。
「では、これで自分は失礼します。白井部長」
「うむ」
バタリ、と木製のドアが閉まる。
今時、木製で作られた物は珍しいが、白木の趣味で作られたのだろう。
「相変わらず、あの人と話をするときは緊張するな……」
思いっきりため息をつく。
「天宮香奈……」
あのプロフィールに書かれていた名前を口に出す。
十一年間も隔離施設にいた、哀れな女性。
かといって同情するわけでもないが。
「ま、なるようになるかな」
そう呟き、そのまま廊下を歩いて行った。