第7話 新潟ビル崩壊事件
結論から言いますと、ミセスブラウンが私に「ここに住みなさい」という発言をしたことにより、私とミセスブラウンとサラリーマンとティッシュ配りの兄ちゃんと女子高生と老夫婦とジンベイを着た外人と小太りの小学生、合計九人による約二週間にわたる奇妙な共同生活が始まることとなった。
私が声をかけた、たまたま道を歩いていた七人。よくよく話を聞いてみるとこの七人、それぞれに事情があり、住める場所を探していたのだという。これまた珍妙な偶然である。まぁ、共同生活をすることになった彼ら彼女らの話はのちのちにするとして、とりあえず今はテレビの内容の方が重要だ。
『――これはもしかしたらテロかもしれませんねぇ』
テレビの中でうさんくさいコメンテイターが喋っている。
『しかし、犯人はどうやってビルを破壊したのでしょうか? 警察の調べでは、火薬の痕跡は一切見つからなかったみたいですし。しかも、白昼堂々の犯行。謎は深まる一方です』
これって……絶対に犯人私達だ! 大丈夫かな……。
『それでは、今回の事件を担当する川島刑事のインタビュー映像をご覧下さい』
テレビの場面が変わり、強面の警察官の顔が映し出された。
川島刑事。この人は『連続マシュマロ窒息事件』や『コンビニ弁当あたためますか? 事件』、『集団全裸男女+オカマ事件』など、有名な事件を数多く解決してきた、日本では知らない人のいない超有名な刑事である。私も何度もテレビ越しに顔を拝見しているが、四十代後半の渋みがある端正な顔立ちのイケメンおじさんである。
『これはテロです。幸い今回の『新潟ビル崩壊事件』では死者はでませんでしたが、またいつ新しいテロが起こるかわかりません。絶対に犯人を捕まえて死刑にしてやります。みなさん、安心してください――』
死刑って……おい。私を含め、テレビを見ていた八人は固まり、沈黙した。
「……お父さん」
ただ一人、女子高生(後に川島友子という名前であることが判明)だけが沈黙せずに小さな声で呟いた。
「えぇえええ~!! お、お父さん!? あの川島刑事の娘さん!?」
一同ビックリ。どうする? ってかどうなる? 不安ばかりが私の小さな胸(自称Cカップ)に押し寄せてきた。
「サイン頂戴! 私川島刑事のファンなの!!」
そんな中、ミセスブラウンだけが空気を読んでいなかった。