第4話 聞き上手
ミセスブラウン、このインチキ占い師、意外に侮れない。
「うぅ、かわいそうにねぇ」
占いに関してはインチキ度百パーセント。しかし、非常に聞き上手。人から話を聞きだすのがむちゃくちゃ上手い。気がつくと、私は胸の内を洗いざらいミセスブラウンに話していた。そして、胸の内を話した私は、とてもすっきりとした気持ちになっていた。
「あの……ありがとうございました。話聞いてくれて。私そろそろ行きます。料金はおいくらですか?」
もともとお金を払う気はなかったが、感謝の気持ちを込めて数千円くらいなら払ってもいいと思えた。
「十万円よ」
「はい?」
私は自分の耳を疑い、思わず聞き返した。
「だから、占い一回十万円だってば」
「…………」
私は少しでもこのクソババァに感謝の感情を抱いたことを後悔し、このクソデブババァをぶん殴ってやろうと思った。
「でも、今回は特別に御代は十万円じゃなくてもいいわ。十万円払う代わりに私を助けてちょうだい。挟まって……一週間……ここから抜け出せなかったのよ」
よく見ると、本当にビルとビルの間に挟まっている。このミセスブラウン、非常に体がでかい。簡単にいうとオデブちゃんだ。軽く見積もっても体重百五十キロ以上はありそうだ。マツコデラックスを想像してもらえばいいだろう。
「……よく一週間も耐えられましたね?」
「ほら、私って見ての通りほんの少しだけふくよかじゃない? だから、何も食べなくても、なんとか一週間もったのよねぇ~。もうお腹ぺこぺこよ」
ほんの少しだけ? どこが? そう突っ込みたい衝動を抑え、私はミセスブラウンを救出しようとブタのように太くて短い腕を掴み、力いっぱい引っ張った。
「うーん!」
「イデデでえぇ! 痛い!! 痛いわよエミちゃん!」
「うーん!!」
「イダイ!! 痛いって言ってんでしょ! ちょっと!」
「うーん!!!」
「ギャー! 離してぇ~!! 腕が千切れる!! 離しなさいよこのブス! アホ! スカポンタン!! ○△×~!!」
一週間飲まず食わずのわりには痩せていない巨漢は、力いっぱい引っ張ってもビクともしなかった。私は諦めることにした。
「でわ、失礼します。また、いつかお会いできる日を楽しみにしております。さようなら」
私はその場を去ろうとした。
「ちょっと~! ヒック! ヒック!! まって、まっ、ヒック、エーン、エーン!! だぢげでぇよぉ~」
ババァ再び泣く。私、心底ドン引き。