【第8話『もう一人の正義』】
ZEROと、影のZERO。
両者は、教室という名の箱庭に立っていた。
光と闇が、息を止める。
「俺は、誰かのために戦う」
「僕は、誰の命令にも従わない」
「それが――正義だ」
「それこそが――自由だ」
次の瞬間――
ドオオオオン!!
床が砕けた。
ZEROが加速する。残像を残しながら、真っ直ぐに突進。
「喰らえ、“制裁の一撃”!!」
右手の《違反の鍵》が展開し、巨大なハンマー状に変形。
その一撃を振り下ろすが――
影ZEROはそれを紙一重でかわし、
背後に回り込み、**「影刃」**を繰り出す!
「闇は、全てを切り裂く!」
シュバッ!!
漆黒の斬撃が走り、壁を一刀両断。
ZEROの肩に深い傷を刻んだ。
だが――ZEROは仮面越しに笑う。
「その程度じゃ、俺の正義は止まらねぇ!!」
傷口から装甲が自己修復を開始。
光子ブースターを解放、さらに加速!
「衛星レーザー同期――クロスバースト・キャノン展開!」
人工衛星G-ZEUSから軌道上照準、
両腕に装着されたキャノンが高エネルギーをチャージ。
影ZEROは即座に空間操作で飛び退くが――遅い。
ズギュオオオン!!
爆音と共に、壁一面が吹き飛ぶ。
破壊された校舎の一部が崩れ落ちる中、二人の仮面が空中で激突。
「なんでそんなに“誰かのため”に戦えるんだよ!」
「お前が諦めたものを、俺は守るために立ってるからだ!」
拳と拳がぶつかる。
衝撃波が爆風を生み、校舎の窓が一斉に割れた。
そして――
二人のZEROが、同時に最後の技を放つ!
「終審の裁断!!」
「全否定の闇刃!!」
光と闇のエネルギーが炸裂。
教室が崩壊し、空間すら一瞬消し飛んだ。
まるで、世界が二つに割れるかのような衝撃。
――そして、煙の中。
どちらかのZEROが、膝をついた。
「……やっぱり、お前は……」
煙が晴れる。
そこに立っていたのは――
ZERO。
本物の、選ばれし仮面の男。
だが彼の拳は、影ZEROを貫かず、胸元で止まっていた。
「……最後まで、自分の正義を貫いたな。だったら――それは、お前の“本物”だ」
影ZEROは、微笑んだ。
「……認めたくなかったけど、やっぱり……お前は、強いな」
仮面が砕け、影ZEROの顔が初めて露わになる。
それは、ZEROと瓜二つの少年――もう一つの可能性だった。




