【第7話『仮面の内側』】
向かい合う、二人の“ZERO”。
姿形、声、背丈すべてが同じ。
だが、放たれる空気だけが決定的に違っていた。
「お前……誰だ」
ZEROが問うと、もう一人の仮面の少年は椅子に足を組み、微笑んだ。
「名乗るほどのものじゃない。僕はただの“選ばれなかったZERO”さ」
「……?」
LUNAが即座に警告を発する。
『注意して、彼の存在――ゼロコードの“旧ナンバー”。試験的に生成されたプロトタイプよ』
プロトタイプ――つまり、最初に創られた“仮面の捜査官”。
そして、選別の末に破棄された存在。
「僕は、お前の影だ。“完成品”であるお前にすべてを奪われた。役割も、存在も、記録も。だから僕は決めたのさ」
プロトZEROの仮面が軋む。
「“この学園を、僕の理想の世界にする”ってね」
その言葉と共に、部屋の壁が割れ、無数の仮面が浮かび上がる。
生徒たちの記憶から抽出された“人格の断片”を、仮面という媒体に押し込め、使役しているのだ。
「この仮面たちは、消された生徒たちの“意志”だ。管理されたがってる。制限の中で安心していたいと願ってる。だから僕が、彼らの希望になる」
「歪んでる……それは、支配だ」
「違うよ。“選択肢”だ。自由なんて、誰も求めちゃいない。だから、君は不要だ、完成品のZERO」
プロトZEROが立ち上がる。
その仮面から黒い稲妻が奔り、無数の仮面兵が床を蹴った。
『多数の干渉反応!変身コード、再起動して!』
「――了解」
ZEROはスカートを翻し、仮面の中心に手を添えた。
「《クロスアクセス:ZERO/BURST》」
光が迸り、ZEROの仮面が裂け、蒼と黒の新たな装甲が姿を現す。
両手に現れたのは、“違反の鍵”――封じられた力を解き放つ特殊武装。
「お前が影なら、俺は光だ。
――理想を履き違えたその仮面、叩き割ってやる」
教室が、戦場に変わる。
ZERO VS ZERO。