【第6話『仮面が笑うとき』】
午前0時、学園の校舎はすでに“立入禁止”区域に指定されていた。
だが、その制限すらZEROにとっては無意味だった。
“復元”された少女――真白ユイは保護されたが、彼女の口から明かされた一言が、ZEROの中に警鐘を鳴らす。
「……“管理者”は、先生なんかじゃないよ。あれ、“生徒”だったの」
「生徒……?」
思いがけない情報だった。
校則を運用し、“除籍”を下す存在が、教師ではなく生徒――それは、システムが完全に“内側”から制御されているという意味だ。
LUNAが即座に解析を進める。
『仮面の使用履歴を参照していたのは、生徒名簿の“最上位権限保持者”。通称、“コードNo.0”』
「コードNo.0……ゼロ?」
自らと同じコードナンバーを持つ存在。
偶然なのか、それとも――。
その瞬間、廊下の非常灯がすべて赤く点滅した。
『警告:仮面の干渉者、校内に侵入。排除シーケンス開始』
床から這い出すように、“影の生徒”たちが現れる。
顔のない制服姿、目だけが赤く光る――まるで、消された者の亡霊のような“監視人”たち。
ZEROは一歩、前へ出た。
そして、スカートの裾を指でつまみ、ほんの僅かに持ち上げる。
「――今日は、俺がルールだ」
仮面が光り、“EXモード”が発動する。
身体の輪郭が揺らぎ、色彩がモノクロームに反転していく。
敵の動きが止まった。
いや、世界が止まった。
時間制御能力“クロノ・フェイズ”発動。仮面に秘められた最終権限。
静止した教室の中で、ただひとり歩くZERO。
机の上、ホワイトボードの裏、天井裏……校内に散らばった監視カメラをすべて破壊していく。
そして、最上階の生徒会室。
その椅子に座っていたのは――
ZEROとまったく同じ仮面をつけた少年だった。
「……会いたかったよ、“もう一人の僕”」
仮面の奥、口元だけがにやりと笑った。