第3話:笑わない生徒会長
静止した時間の中で、彼女だけが――歩いていた。
黒髪のロング、氷のように澄んだ瞳。
整った顔立ちのその少女は、感情のない顔で、宙に浮かぶ《歪んだ時計》に手を伸ばした。
チチチ……チ……
ノイズが走る。風の音が崩れ、色が剥がれる。
周囲の色彩は吸い取られ、世界は――白黒になった。
> 「……まだ、足りない。もっと、止まれ……全部……止まれ……」
そう呟いた少女の胸に、うっすらと“アークの紋章”が浮かぶ。
---
【学園潜入】
ZEROが次に潜入したのは、進学校として名高い私立・霜月学園。
制服姿にすっかり慣れた彼は、今日も女子高仕様の女装に袖を通しながら、小さく溜息をつく。
> 「……そろそろ慣れたと思いたい」
> (LUNA)「You look perfect, Darling. 学園潜入の華よ、女装って♪」
ZEROはLUNAの軽口を無視しながら、生徒名簿を確認する。
> 「生徒会長・白鐘スイ。出席率、成績、全て完璧。だが――」
彼女は、一度も笑ったことがない。
---
【異変の兆し】
放課後。
校舎の片隅で、ZEROは奇妙な場面を目撃する。
生徒の一人がスイに近づいた瞬間、時間が――止まった。
時計の針が震え、教室の音が割れ、ノイズが空間を走る。
> カチ、カチ、カッ……バチバチバチ!
そして色がモノトーンに変わる。
まるで、絵本のページに閉じ込められたような静寂。
> (ZERO)「……時空干渉能力?」
スイが生徒に触れた瞬間、その生徒は――動かなくなった。
表情は虚無、心拍も微弱。
“魂だけが止まった”ような感覚に、ZEROは戦慄する。
---
【戦闘前・対峙】
翌日、ZEROは校舎の屋上でスイと対峙する。
風が吹き抜けた瞬間――世界がまた、静止した。
> 「君は……何者だ」
ZEROの問いに、スイは無感情に答える。
> 「私はただ、世界が“止まって”くれることを願っただけ。騒がしいのが嫌いなの」
> 「止まってしまえば、誰も裏切らない。誰も……笑わないで済む」
ZEROの脳裏に、かつての任務中に消えた少女の記憶が一瞬よぎる。
LUNAが無音通信で告げる。
> 《反応あり!彼女の背後に、アーク反応!怪人が同化してるわ!》
その時、スイの背後に、歪んだ影が浮かび上がる。
---
【変身・戦闘】
ノイズが炸裂し、スイの姿が引き裂かれるように変形する。
> 「アーク怪人《静刻のミヌエット》、戦闘モードへ」
世界は再び、ノイズと共にモノトーンに染まる。
> (ZERO)「世界が……また、止まっていく……!」
ZEROがチョーカーに手を当てる。
> 「――零着!」
> キィィィン! バチバチッ!
カラーを奪われた世界に、ZEROのスーツだけが煌めくメタリックな“色”を放つ!
だが、敵の時間操作能力の前に、ZEROの動きも封じられる。
> (LUNA)「危険!時空フィールド内部よ!通常の動作が0.6倍に減速されてる!」
> 「……じゃあ、言葉を――早く、心を――熱くすればいいだけだ!」
ZEROは拳に力を込める。
> 「動けないなら――心で、超えろ!!」
**《ゼロ・オーバーブースト》**発動!
反応速度を極限まで加速し、時間停止空間内で“心の時間”を上書きする。
> 「クロスエッジ……分離形態!――ダブルスラッシュモード!!」
刀と銃に分かれたクロスエッジが、それぞれの手に!
> 「双撃・ゼロスラッシュ!!」
Zを二重に描く斬撃が、敵の空間フィールドを切り裂く!
ノイズが破れ、世界に色彩が戻る。
---
【ラスト】
スイは、力を失い倒れた。
少女としての人格が戻り、零れ落ちる一粒の涙。
> 「……笑いたかったの……本当は……」
ZEROはその手をそっと取る。
> 「君の時間は……止まってない」
LUNAが空から降下し、事件は無事に隠蔽された。
だが、アークの手先はさらに複雑な姿を取り、学園の裏に潜み続けていた。