第2話:音が消えた学園
校舎を吹き抜ける風の音が、唐突に――消えた。
チャイムが鳴らない。
教室のざわめきも、廊下の足音も、すべてが無音の世界に吸い込まれていく。
ただひとつ、机に突っ伏した少女の唇から漏れる、かすかな呟き。
> 「……音が……ない……こわい……」
その声すらも、誰の耳にも届かない。
少女の目の前で、世界は――沈黙した。
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【登校・潜入】
一方その頃。
都内の名門・私立聖音女学院に、一人の転校生が現れた。
スカートの丈をやや長めにアレンジし、肩までのウィッグを完璧にセット。
女学生の制服に身を包んだZEROが、今日も颯爽と――いや、ややぎこちなく登場する。
> 「転校生の……零子です」
少し低めの声で名乗ると、またしてもざわめきと視線の嵐。
と、その背後から現れたのは、教師姿のLUNA。
口元には笑みを浮かべているが、目はいつものように鋭い。
> 「Good Morning, Students!今日から担任になるLUNAよ~♪」
> (ZERO)「……なにそのテンション」
> (LUNA)「潜入はノリと勢いが命よ。Smile, Smile!」
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【学園の異変】
ZEROは昼休み中、早くも異常に気づいていた。
校内放送が一切流れない。
チャイムも鳴らない。
生徒の声が、なぜかスピーカーのように途切れて聴こえる。
「音」が断続的に“消えている”のだ。
> (ZERO)「情報遮断……にしては精度が高すぎるな」
保健室には、原因不明の頭痛や耳鳴りを訴える生徒が続出していた。
そしてある日の放課後、ZEROは“現場”を目撃する。
校舎裏で、少女が宙に浮かぶ黒いスピーカーのような物体に吸い寄せられ、
音と共に――消えた。
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【変身・戦闘】
ZEROはすぐさま現場へ突入。
黒いスピーカーが歪みながら変形し、怪人の姿を取る。
その名は――《静哭のアダージョ》
アーク幹部“哀将レクイエム”に仕える異形の怪人。
> 「音は……ノイズだ。世界は沈黙によって調律されるべき……」
ZEROはチョーカーに触れ、天を仰ぐ。
Z-ORBITが軌道を変え、地上へ粒子を放射!
> 「――零着!!」
> キィィィン! バチバチッ!
超高速粒子変換により、Z-SHELLが装着される。
背中から起動するクロスエッジZEROが回転しながら手に収まり――
> 「裁きの時だ。音のない世界に、俺の怒声を響かせてやる!!」
> 「LUNA、通信支援!」
> 「Roger!音響解析、敵の“無音領域”を展開中よ!」
アダージョは周囲の空間を完全な無音に変えることで攻撃を封じようとする。
しかし――
> 「無音だろうが……関係ない。拳は、心で叫ぶ!」
ZEROは空中で踵を返し、斬撃と銃撃のコンボをたたき込む!
> 「クロス・ファントム!!」
クロスエッジZEROが銃形態に変形、無音空間を打ち破るように炸裂する音響弾!
> (LUNA)「音、戻った!ZERO、今よ!」
> 「――ZEROブレイク!!」
Zの軌道を描く斬撃が、静哭アダージョのスピーカーを真っ二つに断つ。
爆音と共に、静寂の怪人は崩れ落ちた。
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【ラスト】
事件は無事、隠蔽された。
音が戻った学園には、何事もなかったかのようにチャイムが鳴り響く。
ZEROは保健室で眠る少女の傍に立ち、そっと呟く。
> 「記憶は……消されてるな。でも、守れた。今回は、それでいい」
LUNAがカーテンの陰から顔を出す。
> 「Good job、ZERO。さて、次の任務は――もう決まってるわよ」
> 「……また転校か」
ZEROは短く息を吐くと、再び制服の袖を整えた。
仮面の下で、誰にも知られず、彼は闇に挑み続ける。