【最終話『仮面を脱ぐ日』】
戦いは終わった。
無印館学園の空は、ようやく静寂を取り戻した。
ZEROは、崩れかけた教室の中央に立っていた。
その手には、砕けたもう一つの仮面――影ZEROの“残骸”が握られている。
LUNAの通信が入る。
『衛星G-ZEUS、干渉解除完了。空間歪曲も収束に向かってるわ。ZERO、あなた……勝ったのね』
「いや――勝ったのは、どっちでもない」
ZEROは静かに首のチョーカーに触れ、
ゆっくりと空を見上げる。
ZEROの素顔は、少年のようなあどけなさと、戦士のような覚悟を併せ持っていた。
「……これが、俺の本当の顔」
LUNAが、少しだけ沈黙してから、問う。
『ZERO――どうして仮面をつけて戦ってきたの?』
ZEROは答える。
それは、誰にも話さなかった、最初の理由。
「……“誰か”になりたかったからさ。
本当の自分じゃ、誰も助けられないと思ってた。
だから、“仮面の正義”にすがったんだ」
だが、と彼は続ける。
「でも今日、気づいた。
“仮面”じゃなくても、誰かを救えるって。
“影”も、“光”も、どちらも正義になれるって」
手にした仮面を、そっと地面に置く。
そして一歩、前へ進む。
生徒たちが集まり、沈黙の中で彼を見つめる。
制服を奪われ、コードに縛られ、それでも懸命に日常を守ろうとしていた者たち――
その視線が、今は、仮面のないZEROに向けられている。
「俺の名前は――」
そのとき、風が吹いた。
教室の窓から、朝日が差し込む。
それはまるで、誰かが新しい一日を許したような、そんな光だった。
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エピローグ:
無印館学園から「ドレスコード」の紙が消えた日。
門に新しく貼られたのは、たった一言のルールだった。
『制服、自由。君の色で生きろ。』
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完




