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⑦宴の終わり

 その日の夜は、相田にとって何時間でも飲み食いする事が出来る程に楽しい時間だった。ポーンがテーブルに突っ伏して寝息を立て、ザイアスが近くの荒くれ男と力自慢の腕相撲大会が始まり、相田はテヌールの自慢話に付き合わされた。


 三時間後にはデニスがサージャを呼び出し、もらった恩賞の一部で会計を済ませる。その後、残った金貨を小さな袋に分けて全員に配り始めた。

 貰った恩賞は、立場に関係なく均等に分け合う。これもこの騎士団独自のルールであった。

 相田は両手に乗せられた金貨の入った麻袋の重さに驚く。紐を緩めて中を覗けば、ちょっとした職業でも一か月以上の報酬に近い。

 これが命をやり取りした者達に与えられる対価。相田はデニスに頭を下げ、ズボンのポケットの最奥に捻じ込んだ。


 その後、打ち上げは解散となり、相田はデニスと共に馬車を捕まえて家へと戻る。



――――――――――


「おかえりなさい。あー………どうせご飯は食べてきたんでしょう?」

 カレンが玄関で出迎える。彼女も仕事上がりの恒例行事は知っていたらしく、風呂の用意だけを済ませて二人を待っていた。

「相田、先に風呂に入っていいぞ。ほらカレン、今日の稼ぎだ」

 デニスは恩賞の入った小さな麻袋をカレンに渡す。そして壁を擦る様に進み、自室へと入っていった。

 相田が部屋に入る背中を見送る。


「お父さんはね、お酒を飲んでから馬車に乗ると、すぐに眠くなっちゃうの」

 首をかしげている相田に、カレンが笑っている。

「それじゃぁ、お風呂は相田さんだけね」

 初めから分かっていたように、カレンは一人分のタオルを相田に手渡すと、そのまま家事に戻っていった。


 相田は風呂場に向かう前に、自室へと入る。

「随分とお前達にも世話になったな………」

 丁寧に脱いだ鎧や籠手を机の上に並べ、静かに手を合わせた。既に七着目になるが、初めて実戦で使用したという点において、相田は特別な感情を重ねている。

 王都に戻るまでの間、ゴブリン達の返り血は可能な限り拭き取り、革めくれ等軽度の破損はシリアの教えの下、既に修繕を終えている。それでも盾代わりに攻撃を受け続けた籠手や脛当ての凹みは直しきれず、光の影具合からもその歪みは明らかだった。


「無かったら、何度も斬られていたという事か」

 相田は普段着だけになると、カレンから受け取ったタオルを握り、風呂場へと向かっていった。

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