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④全員が揃うまでは練習です

「いやぁ、隊長。遅いっすよ!」

 既に何杯目か。樽を模した木製の大ジョッキを掲げるザイアスが、ここだと遅れて来た二人に位置を知らせた。

 いつもの店とは、傭兵や仕事上がりの労働者が立ち寄る大衆居酒屋だった。相田も何度か店の前を通ったことがあり、一階と二階が吹き抜けの飲み場となっている。

 大小さまざまな荒くれ男や優男。中には女性も平然と混ざり合ってテーブルを囲み、またはカウンターで肩を寄せ合ってお互いに好きな声の大きさで酒を飲んでいた。


「お前等、少しは仲間意識というものをだな」

 渋々とデニスが空いている席に座り、相田に残った反対側の席を指さす。

 部屋奥の上座。

「えっ………と」

「いいんだよ。今日の主役はあんただからね」

 ザイアスと同じく何杯目か分からないが、大ジョッキを傾けながらシリアが顔を緩める。

「主役………ですか」

 その意味を理解出来ずにいたが、取り敢えず相田は席に座って周りを見渡した。

 正面には下座に座った隊長のデニス。左には空の皿が山積みされているザイアス、その向かい側にはシリアとテヌールが座っていた。

 相田が体を右に傾けると、ザイアスの奥でポーンが座っているのが見えた。大男の陰になっていてすぐには気付けなかったが、彼は居酒屋に連れて来られた子どものように、静かに木のストローで飲み物を啜っていた。


「仕事を終えたら、いつもこの店で飲み食いするのさ」

 それが第十騎士団(うちら)の決まり事なのだと、シリアは持っていたジョッキを空にする。

 だがあと一人足りない。そもそも食事をしている姿を見た事すらないが、例え打ち上げのような席であっても彼は参加してくれないのだろうか。相田はもう一度周囲を一瞥した上で尋ねた。

「サージンさんは………来れないんですか?」

「いや、来てるぞ?」

 串に刺さった肉を頬張りながら、テヌールが不思議そうに呟く。

 自然な一言に相田は驚き、三度周囲を見渡した。拭き抜けの二階席、中央に従って高くなっていく木製の天井、テーブルの下、ザイアスの後ろ。

 だが、どこにも彼の姿はなかった。

 相田は腕を組んで唸る。


「お待ちどうさま! ビールが大ジョッキで七杯ね!」

 軽いノリの女性店員が、左右合計七杯の大ジョッキを指に通して持ってきた所で時間切れ。ザイアス達は一人一杯ずつだと、テーブルに運ばれたジョッキを手際よく配っていった。

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