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④其は黒き盾

 相田は自分の右手を前に突き出した。

「イメージ………イメージ。全てを弾く盾を想像するんだ」

 テヌールが用いた防壁魔法を思い出し、さらにザイアスの盾を想像する。

 発動する為に、相田は何でも考え抜き、漫画やゲームで使われるような知識さえ総動員し、混ぜ合わせた。さらに、盾に関連する言葉を単語を紡ぎ、耳に入れてイメージを増幅させる。

 全てを弾く無敵の盾、それに相応しい言葉を頭の中から捻り出した。

「黒き・・・闇の・・・盾・・・」


 相田は立ち上がった。



「相田! あんた何を!?」

 矢を弾きながら進んでいたシリアは、何も持たずに歩いてきた相田の姿を見て驚いた。

「シリアさん、下がってください」

「くっ! この馬鹿野郎がっ!」

 相田はシリアにゆっくりと近付き、追い越してからも粛々と前進を続ける。


 正面には透明感のある六角形の黒い防壁が無数に展開されていた。


 紙のように薄い盾を展開させた相田は、目を見開きながら堂々と歩き、薄気味悪い笑みを浮かべる。

 俺を殺せるものなら殺してみろと言わんばかりの姿。だが黒い盾が相田を射抜こうと飛んできた矢を次々と弾いていく。時折後方のシリアを狙う矢もあったが、相田が軽く手を払うと、彼女を狙う矢すら分離した盾が動き、それを弾いていく。

「何て力だい………」

 さすがのシリアも息を飲む。彼女からは、黒い盾がそれぞれの意志をもって動き、無数の矢を確実に弾いているように見えていた。

「………通路を抜けたら、後はお願いします」

 相田が通路を抜けると、目の前から放たれた至近距離からの矢も何事もなく集まった黒い盾が弾く。その光景にゴブリン達は唖然としたが、次の瞬間にはシリアに切って捨てられていた。


 相田が大きく息を吐き捨てると、無数の盾は黒い霧となって姿を消した。


「全く………本当に無茶ばかりするね、あんたは」

 シリアが表情を戻した相田に話しかける。

「………闇のアイギス」

「何だって?」

 相田の呟きに、シリアが眉をひそめた。


 神話において女神が用いた盾アイギス。

 相田の知識にあった言葉の中から自然と選ばれ、次の時には口から発していた。無数の攻撃を自動追尾して守るイージス艦の由来でもある無敵の盾の名前を挙げる事で、相田は頭の中だけのイメージに加え、具体性を持たせる事に成功する。

 神に関わる名前にも関わらず、盾の色が黒という皮肉もあ敢えて想像力を高める為に、上手くはたらいてくれたようだ。


「上手くいったからいいものを。あまり無理をするんじゃないよ」

「ですが………通路の突破に成功しました」

「それでも、さ」

 シリアは怒ったような、しかしどこか寂しそうな顔で何かを言いたそうにしていたが、それ以上語らず、相田の前を静かに通り過ぎていった。

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