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⑧真の敵

 相田は相手の言動から、段々と今回の戦争の背景を理解し始める。

「………今回の戦争、お前達の仕業だな」

「表現は正確にしてくれ。仕業だなんて、まったくもって人聞きが悪い。『企画』と『補償』(ビジネス)さ。あくまで顧客が望むサービスを提供したに過ぎない」

 まるで自分達には関係ないと、首を振りながら彼が訂正を求めた。

「むしろ苦情を言いたいのはこちらの方だ」

 イルフォードが肩をすくめながら溜息を吐く。

「君のせいで、我が社の担当者(メンツ)は丸潰れ。彼女は随分と君達の勝手な行動に頭を悩ませていたよ」


 彼のわざとらしい困った笑みに、相田の感情が一気に冷めていく。

 この戦争で、一体何千という命が失われ、何万という人間が不幸になったのか。相田は、会社やサービス等と聞きなれてきた言葉が、これ程までに憎いと思った事がなかった。

「全く、どうして………やりきったと満足した途端にさぁ、こういう展開(オチ)になるかね?」

 硬い土が剥き出しになった地面に震えた腕を伸ばして肘をつき、相田は上半身を起き上がらせる。

「能力が手に入った途端………大した努力をした訳でもないのに、自分が人よりも優れていると勘違いしてさぁ………いきなり全てを見下したかのような腐った笑いを、俺に見せつけやがって」

 笑い続ける膝を立て、全身の痛みに耐えながら相田は立ち上がる。時折、何度もふらつきながらも体の平衡を保ち直し、ようやく静止する。


 相田の挑発めいた言葉を気にする素振りもなく、イルフォードは哀れみを込めながら呆れる。

「何を都合の良い事を………君もその異常な人間(チート)の一人だろう? 人よりも優れた能力を使って………随分と楽しんでいたじゃないか」

「まぁ、否定はしないが………お前らよりかは、幾分か人間らしい生き方だったさ」

 自力で言語を習得し、能力に目覚めるまで訓練を欠かさなかった。能力をもってしても、旨く事が運ぶ事などそうそうなかった。

「僕等もそれなりに苦労してきたと言っても、今の君には信じてもらえないだろうな」


 相田は目の前の青年に向ける視線を維持しながら何歩か動き、骨を紡ぎ直すかのように体の中で音を立てて胸を張る。

「さぁ、しつこい訪問営業は嫌われるぜ? さっさと帰りな」

 虫を払うように、相田が右手を左右に払った。

 あしらわれているイルフォードは、ポケットに入れていた右手で後頭部を掻き始める。

「はぁ………困るんだよな。そういう暑苦しい態度はさ」

 青年が右指を弾き、高い音を響かせた。

 瞬間。

 相田は車に引かれたかのように、上半身をのけ反らせて吹き飛んだ。

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