⑦カンパニー
「初めまして。僕はイルフォード、この世界に迷い込んだ者達を集めて会社を経営している」
「会社だって?」
聞きなれた言葉のはずが、今の相田には違和感にしか聞こえてない。眉を潜めたままの相田に、イルフォードは肩をすくめながら、相田の言葉を肯定する。
「そう、会社さ。飛ばされた、迷い込んだ、表現は様々だが、この世界に飛ばされた人間は君だけじゃない。そして、この世界に飛ばされてきた人達は皆、何かしらの才や能力に目覚めている事が多い」
仮に目覚ましい能力がなかったとしても、この時代にない知識や技術、持ち込めた私物には無限の価値がある。イルフォードは、そんな哀れな漂流者達を救い、集め、共に商売をしているのだと、右手を胸に当てながら謳う。
さらに彼が続けた。
「僕達のお客様は、文字通り歴史を動かしている者達。王族、貴族から国を股にかける大商人、果ては奇跡を求める教祖や大悪党まで。勿論、それなりの見返りを貰っているけどね」
この時代では説明のつかない強力な武具の提供、国家予算規模の資金援助、一騎当千の人材派遣など、歴史に名を残したい権力者や富裕層に対して、その望みを叶える事を生業にしていると、イルフォードは明瞭な表現で自社を喧伝した。
静かな心地良い雰囲気を乱すかのような営業に、相田は話半分で聞いている。その上で、大魔王を横目で見るが、彼は口と目を閉じたまま体を横に向けていた。
相田もそろそろ口を開ける事にした。
「それで? 経営者自らが、俺を採用しに来たのか?」
それくらいは相田にも想像できた。
だが、イルフォードは唸りながら顎に手を置き、苦笑する。
「一応聞いてみるけど、我が社の社員になる気はあるかい?」
「冗談じゃない。お断りだ」
相田は鼻で笑って即答、一笑に伏す。
「ただでさえ異常な奴らの集まりな上、競争相手もいないような万年独占禁止法違反の企業に、まともな運営ができるとは思えないな」
「だが、顧客満足度はすこぶる高い方だ………君が来るまでは、ね」
ポケットに手を入れ直したイルフォードは、予想の範囲内だと一度だけ肩をすくませた。




