④三か月前の爆心地
「………今更だけどさ」
カレンが兄妹達を見送りながら呟く。
「フォースィって………一体何者なの?」
大魔王に視線が集まっていく。
大魔王が連れ歩く無垢な少女。しかし、その組み合わせだけでも異様に映る。その上、退魔士を模した赤い服を纏い、少女の名前もどこか似た響きをもっていた。
「もしかして、御主人様と何か関係があるのですか?」
コルティの問いに、大魔王は即答しなかった。
だが、腕を組み、静かに短く考えるとすぐに口を開く。
「そうだな。あの者達がいない事も丁度良い………お前達には伝えておこう」
大魔王の目が閉じる。
「余の友が、目の前からいなくなる時の事をな」
―――それは三か月前。
空から星々が落ちた直後の事であった。
―――――――――
相田が目を開けると、空はいつもよりも高く感じた。
視界を占める割合が空の方が多い。
動き始めた太陽は沈みかけており、熱を失った後の風が八つ当たりのように砂粒を運び、相田の頬を責めるように叩き続けた。
王都を守る高い城壁も、石畳が走る長い街並みも、歴史を刻んだ風情ある王城も、この地上には既になく、大地は無数の窪地が散逸するだけとなっていた。
それは正に、荒れ果てた世界と呼ぶに相応しい姿である。
「………生き残ったか」
相田はようやく現状を口にする。
目を瞑ると、背中が更に冷たくなっていく。いつもならば、砂を運ぶ北風は忌み嫌われる者として扱われるのだろう。だが今の相田には、孤独ではないという、他者にとって理解不可能な安心感が生まれていた。
「まさか、お前達に助けられるとはな………だが、ありがとう。助かったよ」
相田は目を閉じたまま、自身の左右で背中合わせとなり、爆風の壁となっていた双子竜に言葉を送る。彼らの体は全身に亀裂が入り、無敵を誇った黒い霧もその殆どを使い果たしていた。
「まぁ、これも腐れ縁って奴だな」
「だが、我々に出来る事は………ここまでだ」
「十分だよ」
自重を支えられなくなった足の一部が砕け、双子竜は背中合わせのままその位置を下げていく。




