⑫保護者の質
マキがゆっくりと口を開く。
「じゃぁ、その一緒にいた人はどこにいるのかな?」
「先に行ってろって。後から追い着くって言われた」
そこで会話が止まる。
「先にって………ここから南に行ったって、何もないぞ?」
リコルが口を挟む。
「街じゃなくて、ここの事………だったり、して? あはは………はは」
自分でもかなり無理を言っている事を承知で、せめて会話を繋ごうとケリケラが乾いた笑いを見せる。
だが案の定、リコルに鼻で笑われた。
「そんな馬鹿な話があるか。仮にそうだったとしても、小さな子どもを森しかない場所に、一人で行かせるだけでも保護者失格だ」
やや乱暴な表現ではあったが、彼の言葉は尤もだった。コルティも目の前の少女に、どこか奇妙な、しかし懐かしい雰囲気を感じつつも確信が得られず、周囲の会話を聞くに留まっている。
「どうします? 取り敢えず保護しておきましょうか?」
何が真実か分からずとも、現に少女が一人でここにいる。カレンはその点を強調し、少女の対応を考える方向性を定めようとした。
「変に連れ回して、誘拐だ何だと後々問題にならないと良いがな」
「お兄様!」
妹の言葉にもリコルがやれやれと息を吐くと丸めた寝袋に腰かけ、冷めかけた串肉に手を伸ばす。
「どうせ、保護者もろくでもないさ」
「―――そうだな。余もそう思う」
口に肉を入れた瞬間、リコルの背後から男の声が響く。
「ぶほぉぉぉぉあっ!」
再び元勇者は、肉を噴き出した。
声の主は焚き火の明かりで徐々にその姿を現し、腰まで届く銀色の長髪の半分が炎の明かりで照らされる。
「大魔王………様」
コルティが静かにその名を呼ぶ。
短い言葉だが、その言葉を発する為に、かなりの緊張を乗り越えたかのような感覚。彼女は唾を飲み、自分の喉元が冷めていくのをゆっくりと感じ取った。
大魔王は静かに視線だけを左右に動かし、ここにいる者達の素性を確認する。
「約束通りに来たようだな。結構な事だ」
片頬を緩ませ、相変わらず遥か上から見下ろしてくるかのような瞳のまま満足する。




