⑪親無しのフォースィ
「ガキじゃない! フォースィだ!」
自らをフォースィと名乗った少女は、小さいながらも堂々とない胸を突っ張り、ふんぞり返る。それどころか、今度はリコルに向かって細い腕を伸ばし、人差し指を鋭く向けた。
「そういうお前こそ、偽勇者とその一味だな!?」
「一味………」
野盗並みの表現に、マキが肩を落とす。
「一味って、ボク達も入ってるのかな?」
「私に聞かないでくださいょ」
ケリケラは自分の翼を壁代わりにして隣のカレンに向かって呟くが、当の彼女は反応する所はそこではないと目を細め、適当に流す。
リコルは後頭部を掻きながら周囲を見渡すが、周囲に人の気配はない。その上で、改めて少女の姿を見降ろすが、盗賊の子どもにしては小綺麗で身なりが良く、迷子にしては疑問が多い。
仕方がないとリコルは溜息を吐いて腰を曲げると、フォースィの生意気な指先の前まで屈む。
「偽勇者ってなぁ………一体どこからその話をもって来たんだ? 俺はな、これでも正当な………あぁ、くそ、俺は何で見ず知らずの子どもに、今更説明しなきゃならないんだ」
思い出したくもない記憶が蘇りかけたリコルが溜息に乗って立ち上がり、妹に視線を向けた。
「すまん、マキ。相手を頼む」
「………はいはい。お兄様は相変わらず、子どもの相手が下手なんですから」
戦略的撤退、適材適所を言い訳に後退するリコルに代わってマキが前に出ると、フォースィと呼ばれる少女の前で膝を曲げ、同じ目線で声をかける。
「あなたは、どこから来たの? お父さんやお母さんはどこにいるのですか?」
笑顔と共に首を大袈裟に傾げ、マキは自分達が危険な存在でない事を声と表情で伝えようと試みた。
「うぅーんと………あっちから」
具体的な言葉が出なかったフォースィは、曇った顔で北側を指す。
「お父さんとか、お母さんとかはよく分からない………でも、一緒に旅をしてきた人はいる」
「そう、なんだ」
思わず歯切れが悪くなる。
―――孤児。
マキ達の脳裏に、短い単語が思い浮かぶ。あの戦争によって多くの行方不明や死者が出た。その結果、残された者達がどうなったか。彼女達は、その現実について語る言葉も資格もなかった。
だが、身寄りのない少女を誰かが引き取った。少女の服装から、それなりに身分のある者か金銭に余裕のある者あたりだと、マキが推測する。




