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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第一章 全てが終わった場所で
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⑨懐かしい声

「………おいしぃ」

 手で口元を隠したマキの目が、大きくなっていく。

「え、何ですか、これ。芋なのに柔らかくて、甘くて………でもバターだけの甘さだけじゃない?」

「満足してもらえて何よりです。さぁ、皆さんの分もありますよ」

 食事の時、旨い物を食べるだけで元気が湧いてくる。一人よりも大勢で食べた方が、さらに旨くなる。その相乗効果が、いつしか全員の寒さと不安を払い退けていた。

「ねぇねぇ! フォー………の分は!? 分は!?」

 背中を押されながらコルティの体が左右に揺らされ、食事をせがまれる。

 また懐かしい声である。


 思わずコルティの頬が緩む。

「はいはい、フォーネの分もちゃんと………あら、数が足りないわね。仕方ないから先に私の分を—――」


―――何かがおかしい。


 自分の目元に触れたコルティが、いつの間にか自分の目から涙が流れていた事に気付く。

「コルティ、どうしたの?」

 ケリケラが一筋の涙を頬に通したコルティを、心配そうに覗き込む。

「おかしいですね………先程、声を掛けられたと思ったのですが」

 体を揺らされた背後に、人影はなかった。


「あ、お肉発見! いただきまぁぁす!」

 ケリケラが足で掴んでいた肉串が引っ張られる。

「あ、ちょっ! フォーネ! それはボクの分だよっ!」

 相変わらず人の分まで狙うのかと、ケリケラが睨むように顔を向けると、そこには誰もいなかった。

「え、ちょっと………何で? 確かにそこに―――」

 ケリケラの目にも涙が零れていた。


「コルティ? ケリケラ? 一体、何が………どうなってるの?」

 気が付けばカレンも頬を濡らしていた。

「私にも、声が、フォーネの聞こえたんだけど」

 相田と共に帰って来なかった仲間の声。大魔王から彼女の最期を聞かされていただけに、三人はまさかと立ち上がり、周囲の気配を必死に探り始める。

 しかし、暗い森の中で声の主を見つける事は出来なかった。


「………空耳、じゃないのか?」

 新しい串に手を伸ばし、黙々と肉を頬張るリコルが、落ち着かない三人に雑な声をかける。

「そ………それは」

 否定できない可能性に、カレンの言葉が詰まる。

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