⑤父の仇
「仕方ありません。風が凌げる場所まで後退し、今日は野営をして様子を見ましょう」
コルティが決断する。
周囲もその決定に頷くと、リコルは後頭部を掻きながら突き刺さった剣に近付いていく。
「取り敢えず、約束通りここに来たと伝える為にも、魔剣は持って行こうか」
「え、ちょっ!」
ケリケラが口を縦にして声を上げた。
「何だ?」
「いや、絶対呪われていると思うんだけど」
ケリケラが眉をひそめ、触らない方が良いと暗に訴える。
だがリコルは彼女の心配を鼻で笑い、親指で自分を指しながら胸を張った。
「お前な………これでも俺は元勇者だぞ? 確かに鎧の力を失ってはいるが、それでも呪い程度の耐性は備わっている」
なぁ、と彼は妹に同意を求めるが、予想に反して、マキの表情はケリケラと同じであった。
「………止めた方が良い?」
「はい」
素直にマキが頷く。
「彼の力は、それ程に恐ろしいものです。そして、大魔王もまた、私を生き返らせる程の力を持つ者です。何か明確な目的があるのであればともかく、取り合えず程度の理由であれば、例えお兄様でも触らない方がよろしいかと」
「………お前がそこまで言うのならば、止めておこう」
リコルはバツが悪そうに、魔剣に背を向けて戻ってくる。
「………相田さんに、二度も負けてますしね」
「何だと?」
彼が横に来たと同時に呟いたカレンの軽口に、リコルは一瞬だけだが厳しい目を彼女に送る。
「どういう意味だ?」「お兄様!?」
カレンの前に立つと、リコルは視線を落として改めて睨み付けたが、それもすぐに自ら手で顔を覆い、拭うように手を降ろす。
「………いや、気にしないでくれ」
「う、うん。私も………ごめん、なさい」
息が止まっていた事に今気付き、カレンは視線を泳がせながら大きく深呼吸を始めた。
カレンも同年代では強い枠に入るとはいえ、勇者と比べれば力の差は歴然である。さらに言えば、父親や大切な仲間達を殺された彼女としても、リコルや妹のマキ、特に兄の方との距離感に戸惑う事が多く、気が付けば先程のように、彼女らしからぬ言葉が出る事もあった。




