④手掛かりは一本の魔剣のみ
「剣? これは、彼の魔剣かしら? 」
「あぁ………だが、随分ときつい色を出してるな」
共に戦った者、相対した者、それぞれが何度も見てきた魔剣だったが、黒い刀身から発せられている言葉に出来ない何かは、全く別物のように静かに光沢を放っている。
リコルがわざとらしく周囲を見渡すが、見えるのは瓦礫、砂、鉄のように溶け固まった大地だけであった。
「残っているのは、剣くらいのようだ」
「どう、しますか?」
それ以上会話が進まなくなり、カレンがコルティ達に顔を向ける。
風が強くなる。
目の前の砂が南へと運ばれ、北から新しい砂が置かれていく。それは変化であり、不変であった。
「三か月後という話は、今日がその日なんだが………思えば時間までは言ってなかったな」
「もう、街に戻る時間はありませんね。一番近いゲンテの街でも夜中になるかと」
マキがコルティかケリケラに決断を求めるように視線を送る。
「だがゲンテと言っても、今や交易どころか、交流すら絶えかけている過疎地だ。戻るなら西だろう。時間はかかるが、確実に安全だ。一度戻って、またもう一度ここに来ればいい」
「でも、それじゃぁ日が変わっちゃうよ」
リコルのもっともな意見に、ケリケラが今日にこだわった。
「なら野宿しか………まぁ、この顔ぶれで野盗に負けるとは思いませんが」
元勇者とその妹、魔王軍の元親衛隊長と魔王と契約した有翼亜人。騎士団に昇格したばかりだが、既に死線を潜って来たカレンが、襲う野盗の方が哀れだと笑って見せる。
だがリコルは問題はそれだけじゃないと、真面目な顔で返してくる。
「いいか? 野営するにもここじゃぁ風が強すぎて駄目だ。火は消える、食事に砂が入る、地面は硬い、天幕を張っても、下手すれば吹き飛ぶぞ」
爪先で地面を小突きながら、リコルが知らない音を周りに聞かせる。
寝ている間に砂を鼻と口から好きなだけ食べたいのならと最後に付け加えると、誰も何も言えなくなっていた。元勇者とはいえ、その前は冒険者として生きてきただけあり、彼の説得力は十二分に強かった。




