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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第七部 闇と共に去りぬ
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序章① 馬車に揺られ

 一台の馬車が、手入れを忘れられた街道を虚しく進んでいる。

 街と街を繋ぐ道を侵食している無粋な雑草は、我先にと生い茂り、辛うじて街道を維持している石畳の領土に亀裂を走らせていた。

 かつては多くの旅人や商人達を運んでいたこの道は、実に三か月ぶりに来た馬車を受け入れている。


「今日中には着けそうですね」

 白と黒のメイド服を着た小麦色の毛を纏った亜人は、地図上では街のある場所に目を細めた。手綱を握る手は緩く、これまで休みなく働いてきた体にとって、馬車の規則的な揺れは、疲労と安堵が体を奪い合っている。


―――あの日から三か月。


 カデリア王国とウィンフォス王国との戦争は、ウィンフォス王国の勝利に終わった。

 カデリア王国から仕掛けた戦争によって、ウィンフォス王国の王都は二度の防衛戦によって壊滅的な被害を受け、さらに停戦に赴いたウィンフォス王国の第十一代国王が謀殺されるという、未曽有の事態の中での逆転劇であった。

 その報を聞いた王都の国民達は、苦しい生活の中であっても大いに喜び、勝利に酔いしれた事は言うまでもない。


「コルティ、本当に信用できるの?」

 荷台の中で黒髪の女性が水袋の中を飲み干す。薄い鉄と獣の革を合わせた騎士団の軽装鎧、左右の腰には細い剣を下げ、幌の天井よりも遠くを見るように、女性が独り言のように呟いている。

「信用するしかありません………それしか御主人様に繋がる糸はないのですから」 


 今は滅亡したカデリア王国の王都であるブレイダスに、無数の星が降り注いだ三か月前の大災害。いつしか人々が『星降りの天災』と呼ぶようになった日の夜。シモノフの大関所に向けて撤退していたコルティ達の前に、突如、大魔王が姿を現したのである。

 彼は三か月後にブレイダスの街に来るよう一方的に言伝し、十分な言葉を交わす事無く、姿を消した。

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