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④人を超えた何か

「破れかぶれの、特攻………は、考えすぎか。吾の魔力もまだ残っているが、これからの事も考えると、あまり無駄遣いもしたくはない」

 アスタロッテも自身の体を再構築できない程に魔力を消費するとは思っていなかった。魔力を元の状態にまで取り戻すには、年単位での時間を要するだろう。そう先々の事を考えていた彼女は、近場の街を襲い、手足の如く扱える怪物達を増やす計画へと修正し始める。


 相田とアスタロッテとの距離が、あと数秒程で手が届く距離まで詰まっていた。

 彼女が呆れた顔で溜息を地面に向かって吐き捨てる。

「人間の考える事は、ほとほと理解出来ぬ」

 結局、アスタロッテが出した答えは、多少の魔力消費は止む無しと黒い波動で止めを刺す事となった。

「もうすぐ夜。暗くなるまでには済ませて………」

 ふと、彼女は足元の違和感に気付く。


「日の強さが………影の長さが変わっていない?」

 アスタロッテが相田達との戦いにかけていた時間の感覚と、足元に作られる影の角度と長さの変化が合わなかった。

 思わず彼女は、陰を作る光源に目を向ける。

「有り得ぬ………」

 太陽は未だに地平線の上、戦う前とほぼ同じ位置で留まっていた。

 そしてすぐに相田へと視線を戻す。


―――焦った表情で。


「気付いたか?」

 口の中が乾き、水分を失った口で相田は囁いた。

「言っただろう? 終わるまで日は沈ませねぇって」

「ば………馬鹿げた事をっ!」

 他に思いつく言葉がない。アスタロッテは短く吐き捨てた。

 その言葉は彼女自身も覚えていた。だが、それは単なる挑発としての比喩に過ぎないと思っていた。

 本当に()()()()()()()()()()()などとは、思っていなかったのである。


「貴様の能力は………天の星々すらも影響させられるというのか?」

 思わず息を飲んでいた。

 飲むしかなかった。

 アスタロッテの心の中で、初めての感情が泡となって表層へと生まれ始めていた。

 気が付けば後ろに半歩下がっていた。


 ついに、相田が彼女に手が届く位置に辿り着く。

 そして、背の低くなった彼女を見下ろす。相田の表情は疲労に満ち、視線も意識しているのか、それともしていないのか、唯一点のみを半ば茫然と見つめていた。

「貴様、本当に人間か?」

「さぁな。俺は………今まで俺の事を信じてくれた奴等や、先に逝った仲間達の想いを無駄にしたくない、そう思い続けて来ただけだ」

「………痴れた事をっ!」

 アスタロッテは、咄嗟に手のひらを相田に向けると、予告なく黒い波動を打ち込む。相田の上半身は空を巻き込んで漆黒の空間に包まれたが、色が晴れても人の姿は何事もなく残っていた。

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