⑥退魔完了
「だが、これで最後の一撃。これで、吾の勝ちよの」
冷や汗を欠かされたアスタロッテが、乾いた笑いを見せつつ相田に腕を伸ばす。
「はっ、馬鹿言っちゃいけねぇ」
高射砲とそれを支える赤い菌糸が粒子となって空気中に舞い上がり、やがて蛍のように消えていく。その粒子を柔らかく触れるように見送りながら、相田は落ち着いた声で突き返した。
「三回と言ったのは、俺じゃない」
「っ!?」
アスタロッテがその意味に気付いた時には、彼女の腹部から白い手袋が突き出していた。
彼女の顔が歪んでいく。
「瀕死の癖に………どこに、どこにそんな力が残っておる」
「三回と言ったら、必ずやり遂げる………それが俺の自慢の弟子だ」
両手を組んだ相田は、アスタロッテの背後に見えるフォーネに対し、絶対的な自信で迎える。
そして、小さな声で彼女の心にそっと呼びかけた。
「………よくやったぞ、フォーネ」
我慢できず、相田の目頭が徐々に熱くなる。
フォーネが残った左手で放った技は、相田の持っていた本にある『剣狼』と呼ばれた正義の戦士が得意とした貫手の技を再現していた。
「ししょーとの約束は………絶対に、絶対に守るんだからっ!」
彼女は自身に蓄えられた魔力を外部に放出できない。その代わりに、内部で身体強化として発動し、人間では不可能な力を得ることができる。
「体に穴が開いた程度ではっ!」
アスタロッテは可能な限り腰を捻って振り返ると、フォーネに向かって左手を振り上げた。
「もう遅い!」
フォーネは拳を握り締めた。
これが三度目。最期の一撃である。
「奥義を食らえ!! ごっとはんどくらっしゅ!」
フォーネは体内に残った全ての魔力を、無理矢理自身の傷口から放出させた。
―――瞬間。
激しい閃光と共に大爆発を引き起こし、アスタロッテは形を残さずに四散した。
「ありがとう………そしてさよならだ、フォーネ」
魔力を消費尽くしたと同時に、体内に留めていた魂が解き放たれ、人形のようになったフォーネが、爆発に包まれていく。相田は、笑顔のまま消えていく彼女に言葉を送る。




