④究極の物理攻撃
だが、その代償はあまりに大きかった。
ガーネットは相田の代わりに黒い波動を受ける事になり、黒に触れた上半身が跡形もなく消滅し、根元を失った巨大な赤い翼が、本体に遅れてずしりと地面に没した。
「ぐぅっぅうぅぅぉぉぉあっ!」
唇が震え、喉が空気を求める。相田はあらゆる感情を声に代えて立ち上がり、アスタロッテを睨みつける。
「蜥蜴風情が。醜い体で我に触れるとは………」
抵抗を受けたアスタロッテも、不快な表情に満ちていた。
「もう一度………言ってみろ」
相田は静かに歩きながら、二人の間に倒れているガーネットに近付く。そして既に動かず、半分になってしまった体に手を乗せると、まだ熱さが残る肌を撫でた。
一年にも満たない時間だったが、相田の窮地を何度も支えてきた戦友であった。
「最後までだらしのない主人で悪かったな………ありがとう。助かった」
その上で、相田が無言のままのアスタロッテを睨む。
「聞こえなかったのか? もう一度言ってみろと言ったんだ!」
相田の周囲に黒と赤い粒子が浮き始める。
「貴様………」
正体の分からない現象に、アスタロッテが半歩下がった。
「今………下がったな?」
相田は見逃さなかった。
その行為は些細なものだったが、相田の能力を活かすには十分な引き金となる。
「やるぞ、ガーネット!」
迷う事無く、相田はガーネットの切断面に勢いよく手を突っ込んだ。火に祝福された竜の体内に手を入れた瞬間、相田はその能力をもってしても上回る熱によって自身の肌が焼ける音と匂い、そして煙にさらされていく。
「………ぐっ」
だが、言葉にはしない。口が裂けても、決して言葉には出さなかった。
魔古き魔王といえど、アスタロッテに生半可な魔法の類は通用しない。かといって物理攻撃も、黒い壁が大抵の威力を受け止めてしまう。
ならばと相田は、物理攻撃に特化した兵器を想像する。
沸騰するかのような血液と、脳から放出される興奮剤を全力で利用し、その名前を口にした。
「アハト・アハトォォォォッ!!」
第二次世界大戦においてドイツ軍が用いた8.8cm高射砲を、ガーネットの体内から殻を破るように生みだし、一体化していた腕と共に引き抜いた。
今まで機械や近代兵器といった複雑な機構を持つものを創り出した事はなったが、女吸血鬼が決戦用にこの兵器を持ち上げた物語を参考に、外見だけを繕う事に成功させる。




