③命を賭して
「吾に傷を付けるか! この動物風情がっ!」
「隙ありぃぃぃいぃっ!」
体に一撃を入れられたアスタロッテがフォーネを睨んだ一瞬、相田は扇と魔剣の接点を滑らせ、そのまま白い肌を黒い刀身で切り裂き、弧を描くように右肘から先を切り払った。
「吾の………美しい腕、を」
どんな強者でも、人は視線を二つに割って見る事はできない。相田とフォーネが常に直線状に並んでいる限り、アスタロッテはどちらか一方しか視界に入れる事が出来ない。普段の彼女にとって、全方位を守る事は容易かもしれないが、部分的とはいえ拮抗した力をもった相手が複数いた事、そして何よりも、相田の能力によって様々な現象の強弱が変化し続ける環境において、二人の連携はアスタロッテの集中力のそれを上回っていたのである。
一撃目で絶対的な防壁を破り、二撃目で相手の手数を半減させた。
そして、相田とフォーネはすかさず三度目の攻撃に移ろうと体を傾ける。
「吾を………魔王たるアスタロッテを舐めるでないわ!」
地面から生まれた黒い衝撃波が二人を吹き飛ばす。相田もフォーネも、背中を荒れた石畳で擦り続け、一回転して勢いが収まった。
「………不愉快極まりない者共め」
苦虫を噛みしめる表情のアスタロッテが左腕の断面に意識を集中させると出血が収まっていく。さらに、切断面の赤みが消え、周囲で浮遊する黒い粒子を集めて白い腕を生やすと、即座に掌を相田へと向けた。
「くそっ!」
二人の連携が防がれる。
「まずは貴様からだ! 死ぬがよい!」
五指から黒が解き放たれた。
立ち上がり、構え、対抗するまでの時間は残されていない。相田はうつ伏せになったまま黒を眺めるしかなかったが、その色は遥か上空を通り過ぎていく。
同時に地面が揺れる。
その原因であろう赤い巨体が横たわり、相田の視界の半分以上を占めた。
「………ガーネット」
相田は拳を握り締め、地面に叩きつける。
ガーネットは残された体力でアスタロッテに突進し、相田に向けられていた腕の角度を無理矢理ずらしていた。




