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⑭沈黙の応酬

「フォーネ。まだ動けるか?」

 命を掛け合う空気の中、相田は柔らかい声で言葉を送る。

「はい、ししょー。でも………あと()()くらいかな。えへへへ」

「そう、か」

 残りの数を知れた事が幸せなのか、それとも不幸なのか。相田は彼女の最期を強く意識する結果となった。

 それを悟っても尚、相田は目を細めながら震える口で笑ってみせる。

「だが………その攻撃は()()()()()()()()んだろう?」

「………もちろんだよ。ししょー」

 フォーネもやや鼻声になりながら笑っていた。

 ならばと、相田はあえて強調させる。それを分かっていたのか、彼女も飛びっきりの笑顔で両手を包み、握られた白い手袋の甲を見せる。

「この、ししょーから貰ったお守りと、今まで読んできた本があったから!」

「………立派な格闘、いや退魔士になったな」

 復活した魔王を倒せるのならば、それはもう一流の退魔士と呼ぶに相応しい。相田は、真剣に軽口を躱しながら、彼女との出会いを懐かしんだ。


 そして改めてアスタロッテに向かう。

「さぁ、時間だ。答えを聞こう」

 選ばなくとも、それは相田にとって有利に働く。そして、ここぞとばかりに、ある(悪役)の言葉を使う。物語通りに滅びの言葉を使われない分、相田は堂々と声を荒げる事ができた。

 だが、アスタロッテは何も答えない。

 ならばと、相田は待ち続けた。

 ここで『どうした』と尋ねる事は、反って相手に話を譲る事に繋がる。相田もまた静かに待つ事しか選択肢がない。

 時間にしては些細な沈黙だったが、二人の間を流れる風が街を一周したかのような長さに相田は感じられた。


「ふむ」

 小さく鼻から声を出したアスタロッテは、伸ばした右手をゆっくりと下げ始めた。

「どうやら、我も自省すべきか」

 自分に語り掛けるように、彼女は相田から視線をずらして話し始める。

「目的を達したのだと、勝ったのだと思い過ぎるのも良くない。数百年前にも経験したはずなのだがな………成程成程、短所や癖といったものは中々に直しづらいものよ」

 左手を腰に当て自嘲する。

 相田もフォーネもまだ口を開いてはいない。特に相田は、彼女の話を聞き続けるべきか、反論して会話から優位性を奪うべきか、そもそも奪えるのか判断しかねていた。

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