⑬脅しは逆効果
「戯言を」
アスタロッテはこの状況においても軽口を叩く相田に対し、明らかに不愉快な表情に変わっていた。
そこに、未だ起き上がれていないフォーネに目を向けると口元を緩め、手のひらを彼女へと向ける。
「面白い。その軽口がどこまで続くのか、是非にも興味がある。この兎が死ぬ所を見ても、まだその顔を続けられるかの?」
フォーネに、まだ立ち上がるだけの力が戻っていない。
「やればいい」
「………何?」
相田は短く即答した。
「フォーネは俺と共に命を懸けてここにいる。それに………どの道長くはない。俺も、あいつも知っている」
ポケットの中の手は強く握られ、湿っていく。相田は感情を相手に見せられないが、心と拳の中にはしっかりと溜め込んでいた。
「だが、やるなら覚悟しろ」
目に全身の力を送り、自然と相田の声が低くなる。
「俺の能力はもう知っているな? もしもフォーネを殺したら、俺は間違いなくキレる。この街を更地にしてもまだ足りない程にブチ切れる。その時、お前が頭を下げて謝っても、泣いて命乞いをしても、決して許さないと先に言っておく」
その言葉を聞いて、フォーネとアスタロッテの表情は対極的だった。
「おばさん………早く謝った方が良いよ? あそこまで怒っているししょーは見た事がないから」
両手を地面につけ、汗を垂らしながらフォーネが起き上がる。
「………黙るがよい」
右手を伸ばしたまま、アスタロッテの動きが止まっている。
彼女の取れる選択肢は大きく二つ。
フォーネを殺せば相田の感情は爆発し、自分で言った事が能力として上乗せされる。逆にフォーネを殺す事を諦めれば、アスタロッテは相田の言葉に引いた事になり、やはり相田の優位性が能力として少なからず影響する。




