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⑫世界の半分を

「さて………」

 音が止み、黒の貴婦人が長い黒髪を流しながら相田に顔を向ける。

「数百年ぶりに吾は復活を果たした。これからは、再び力を蓄えながら、この世界を好きにさせてもらうが………さて、貴様はどうする?」

 目的の殆どを満たしたかのように、彼女は楽観的で余裕をもった声で相田に話しかけてきた。


 相田は何も答えない。

「ふむ、吾の説明が足りなかったか? それとも答えが出ないのかの」

 まぁいいと自己解釈を済ませ、彼女は言い方を変える。

「一応聞いておくが。貴様、吾に従う気はあるか? 偽物とはいえ、魔王を名乗るに近いその力………殺すには惜しいと思うておる。今なら吾の右腕として、その席を用意してやっても良い。勿論、貴様に迎合する者達も厚くもてなしてやろうぞ」

 王道中の王道。

 絶対的強者のみが口にする事を許された言葉である。


 彼女の言葉に含まれている意味もまた、王道となる。故に相田は静かに首を横に振った。

「俺が首を縦に振っても、きっと俺にとっても仲間にとっても良い事にはならないだろうよ」

 仮にフォーネやガーネットの命を救えたとしても、それはきっと自分にとってもフォーネ達にとっても枷となる。相田は表情を和らげ、フォーネやガーネットに目を向ける。

 自然と相田は笑っていた。

「それなら、こんなだらしのない俺を信じてついて来たこいつらと最期まで一緒にいるさ」

 言い終えた時、相田は自然に振る舞えた自分がいた事に初めて気付く。今、相田は優しさ、笑い、怒り、あらゆる感情や表情を、相手に合わせる必要もなく打算無く顔に出していた。

 いつも誰かの顔色や言動に気を遣い、相手を傷つけないよう、自分が不利にならぬようにと、立ち位置を常に意識しながら振る舞っていた自分が、遥か後方に立っている様であった。

「成程。これが本当の俺か」

 思わず自嘲していた。


「………ここに来て笑うか」

 アスタロッテも拒否して来るだろうと予想していたが、自分の要望を断られただけでなく、一笑された事の方に眉をひそめる。

「気でも狂ったか?」

「なぁに、()()()さ。元々俺達はどこかしらおかしいのさ。だからここにいる。いられる。俺もあんたもだ。そう思わないか?」

 目の前の敵を倒さない限り、生き残る事が出来ない。相田は大きく息を吸うと魔剣(エビルカリバー)を石畳に突き刺し、ポケットに両手を突っ込んだ。

「さぁ、殺し合いを続けよう、魔王アスタロッテ。どちらかが死なない限り、今日の太陽は沈まないぜ」

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