⑪残った色は黒
「さて………」
アスタロッテが相田に顔を向ける。
「あの道化に言いたい事があれば、待ってやってもいいぞ? 聞けば、随分と恨みがあったのだろう?」
彼女の顎が、くいと男を指す。
アスタロッテは、あの男を逃がすつもりは毛頭ない。相田はそう受け止めた。
「いや………もう、かける言葉すらねぇよ」
復讐は自分の手でと思っていた時もあったが、相田は小事として諦める。
他国の王を謀殺し、侵略し、しかし不利になるや家臣に責任を押し付け、助言を聞き入れず、あまつさえ代々封印していた古代の魔王を浅知恵で解き放ち、ついには気が付かないまま手の平に乗せられて、最期に握り潰される。
「どこの世界にも、最後の最後まで変われない人間がいるんだと見させてもらった………自分もそうならないようにと思った。それで十分さ」
「そうか」
肩をすくめる相田に、アスタロッテは鼻で笑い、背を向けた。
「どうやら、方々に恨まれていたらしいな………まぁ、吾等が言える立場ではないが」
「おのれ、おのれ、おのれ! 貴様のせいで………貴様等のっ!」
アスタロッテが扇を扇ぐと、パーカスは風で舞い上がる草花のように吹き飛ばされた。
「ひいいぃぃぃぃぃ!」
落ちた先は怪物達の群れの中。
「お前達、腹だけは壊すなよ?」
その声で、怪物達が一斉にパーカスに貪りつく。悲鳴なのか、咀嚼の音なのか、判別がつかない音が廃墟と化した街に響き渡った。
誰もが予想だにしない最期であったが、カデリア王国の国王の死亡が確定する。
この瞬間、カデリア王国の滅亡とウィンフォス王国の勝利が決定する。




