⑧黒を裂く白
放出する光は黒の方が圧倒的に優勢だったが、腕相撲最後で足掻く手首の捻りの如く、相田の白い光は消えずに、体を覆う程度で耐えていた。
「ぐぬぬぬぬぬ!」
相田の視界の隅から黒が侵食していく。
仲間達の顔が生まれては水泡の如く脳裏に消えていく。
「うるせぇ、うるせぇ! まだ走馬灯の出番じゃねぇぇぇぇぇっ!」
相田は左右の手首をがっちりと合わせ、閃光を束ねた。
「いくぞ、ケリケラぁっ!」
翼をもつ少女の名を呼び、さらに物語の中から互いに撃ち合うワンシーンを鮮明に形作る。
「四倍だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
瞬間。相田の両手は光に包まれ、闇を切り裂きながら指向性をもった閃光が突き進んだ。その余りある威力は、相田の体を反作用で吹き飛ばそうとしたが、相田は右足を浮かせながらも残った左足を地面に沈めながら耐えきる。
代わりにと、周囲にあった瓦礫の残骸が全て後方へと吹き飛ばされていった。
「………なんと」
迫る白に、初めてアスタロッテが驚愕する。その言葉と同時に、彼女は光に包まれた。
太陽を下に世界の光量が元に戻ると、相田の前には誰もいなかった。
「やっ………いや、今のはなし」
思わず言いかけた言葉を、自主的にツッコミを入れながら首を振り、霧散させる。沸騰しかけている自分の脳が、いつどこで、自分の能力を無意識に発動させるか分かったものではない。相田は無言のまま前のめりになりながら膝に手をつき、大きく呼吸をし続けた。
―――体が動かない。
技の想像力が正確である程、相田の能力もそれに倣って効果を増していく。それは同時に、物語と同様に発生した反動も発動する事を意味する。
「な、成程。これがあの時の痛みってやつか………い、痛ぇってもんじゃねぇぞ。まるで全身の皮膚が剥がされたまま、筋肉痛になったかのようだ」
これで背中を叩かれたら堪らない。相田は、呼吸を繰り返すも一向に動かせない体の中、激しい疲労感と眩暈、激痛に襲われながらも周囲を確認する。
「し、ししょー」
やや遠くで、土埃に埋もれていたフォーネが地面に伏したまま相田を見つめ、そして親指を立てていた。
それには応えようと相田は震えながら膝から手を離し、右手で親指を立てる。
相田は鉛のように重くなった足を動かし、息を吐きながら一歩ずつ踏み歩きつつ、体を起こし始めた。




