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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第七章 覚悟と危機感と想像を
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⑩南へ

「我々はこれより………撤収する」

 決断が下る。

 相田は木々の隙間から僅かに見える空に向かって目を閉じた。


 しかし、デニスは地図に向かって指を向けながら『だが』と続ける。

「撤収前に一度、敵の本拠地に探りを入れる」

 続いた言葉に相田はすぐにデニスの顔を見た。

 シリア達は地図に視線を固めたまま動かない。

 隊長が話を続ける。

「蛮族共の本拠地となっている古城を探り、状況を把握。援軍が到着しておらず、かつポーンの言うように敵の数が少ないのであれば奇襲を行い、先遣隊を殲滅させる」

 上手くいけば、蛮族達の援軍が引き返す可能性もある。デニスは一旦会話を切り、相田の顔を一瞬だが見上げた。

「………可能であれば村人を救出する」


 地獄の底に吊るされた一本の糸、絹より薄く細い一筋の光が残された。


 デニスが全員に確認するように口を開く。

「我々の主力よりも、敵の本隊が到着する方が早い事はほぼ明白だ。この機を逃すと、我が国の領土がさらに侵される恐れがある。だが判断は間違えるな、奇襲を行うのは条件が揃えばの話だ」

「「「了解」」」

 全員に目を配ったデニスだったが、どちらかといえばその言葉は相田に向けられたものだった。だが今の相田に不満など言える訳がない。例え蜘蛛の糸以下の細さであっても、現状では十分過ぎる程の希望であった。

 相田もデニスの視線に静かに、そして覚悟を決めて頷く。

「各自移動準備。村までは馬で移動するが、そこから先は徒歩だ」

 準備といっても相田は特にする事がない。唯々遅れを取るまいと、急いで馬にまたがった。

 

 腕時計の短針と長針が、後一時間で真上で重なる。

 相田が空を見上げれば、二つの月の大半が欠けている。

 

 夜襲の条件が揃っていた。

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