⑤少女が立ちはだかった
最前線の騎士達が大通りの石畳を踏み蹴り、セルへと剣を振り上げた。
「いくぜぇぇぇぇっ! 最後の大舞台だっ!」
セルが雄たけびを上げて大剣を振るうと、五人の騎士が一斉に宙を舞った。
鎧を付けた屈強な騎士ともなれば、その重量は人間を含めて相当なものになる。だが、それを感じさせる事なく、セルの前に立っていた騎士達は次々と左右に、空に、地面へと薙ぎ払われ、切断され、叩き潰されていく。
「敵を休ませるな! 突貫!」
セルの大剣が振り払われ、その隙をついて騎士達が剣や槍を彼の体に突き立てる。
だが、金属の切っ先はセルの装甲で半分が防がれ、残りは銀の精霊による重力防御で攻撃の方向性を上下に反らされていく。騎士達の攻撃は少なからずセルに命中しているが、散っていく命に値する被害を与えるまでには至らなかった。
その激戦の横を、ロデリウス率いる後方の騎士達が走り抜けていく。
戦う為に立ち止まる者、戦わずに走り抜ける者。互いに思う所はあれど、それを口にする事なく、騎士達は自らの役目を果たそうとし続けた。
「けっ、そう来たかよ! だが、そうはさせねぇ!」
セルは大剣を一周させて周囲の騎士達を等しい高さで切断すると、そのままの勢いを利用して大剣を縦の軌道へと変化させ、石畳を粉砕させる。
強行突破を試みていたロデリウス達は、石畳の弾丸の雨を真横から受け、当たり所の悪かった騎士が次々と膝の力が抜けるように倒れていった。
「くっ!」
門があった城壁の真下で、ロデリウスが礫の一撃を受ける。予め展開しておいた魔法障壁で、石の直撃を避ける事が出来たが、不幸にも乗っていた馬の後ろ脚を打ち抜かれ、馬ごと前方へと一回転した。
不幸は重なる。彼が石畳から顔を上げると、そこには重戦士の足があった。
「へっ、俺にもまだ運が残っているようだな! 敵将をこうも簡単に討ち取れるんだからな!」
鼻を啜り、セルが大剣を振り上げる。倒れたままのロデリウスに、その一撃を防ぐ手はない。
「ロデリウス様! お下がりを!」
腰まで伸びた黒髪を浮き上がらせながら、少女がロデリウスの前に立つ。彼女は持っていた二本の双剣を同じ向きに揃えて構えると、火花を立てながら大剣を斜めに反らせた。




