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③順調からの一転

「南西部の区画では、敵兵が殆ど残っていないそうです!」

 ロデリウスは自分の馬と並走して走る猫亜人(バステト)から報告を受け取り、リバスに伝えた。

「そうか………ならば君の読みは当たりという事らしい!」

 先頭の王国騎士団が、最初の門の破壊に成功する。木製を中心とし、その外側を鉄で補強した門は、騎士団が用意した破城槌の連続により、乾いた大木が裂ける時に聞かせる特有の音を響かせ、小さな石片と砂埃を巻き上げながら倒壊する。


 予想以上の進撃速度と、順調な流れに、リバスは年甲斐もなく高揚し始めていた。

「よし! このまま二枚目の突破に向かう!」

 掲げた剣に多くの騎士達が声を上げ、追随する。

 騎士達は二枚目の門を目指し、馬と馬の間に固定された大木をそのまま杭にした破城槌を先頭に走らせる。馬の頭よりも遥かに長く伸びた杭の先端は鉄で補強され、門の一点に穴を穿つと、鎖の弛みによって馬が扉に激突する前に減速、反転する。そして、次の破城槌を打ち込む為に、ある程度離れていた部隊と交代する。これを繰り返す。

 いかに堅牢な門とはいえ、馬の速度で衝突する巨大な質量と先端の強度の前では、三度目の衝突で扉の中央部に隙間が生じ始めた。城壁の上からは、独自の判断で弓兵から散発的な矢が放たれているが、王国騎士団の方が数に勝り、狙いを定める前に射抜かれるか、分厚い装甲の前に弾かれるかの二択しか用意されなかった。


 大きな振動と音が、城壁を挟んだ空間を響かせる。

「あと一撃で、扉が歪むぞ!」

 中盤で待機していたロデリウスに対し、騎士総長のリバスが前線で指示を出し続ける。

 大国を相手に少数で挑む恐怖、しかしそれを上回る戦果と勝利を感じさせる展開に、王国騎士達は大いに士気を高めていた。

 加速した馬に支えられている破城槌が扉に三度激突する。木が裂け、鉄がひしゃげ、城壁に固定していた留め具の一部が外れたのか、ついに扉の右側が傾き始める。


 王国騎士団の士気がさらに上がる。

「よぉし! もう一発だ! 次で―――」

 扉が倒れる。そう言いかけたリバスの声を封じるように、歪んでいた扉が吹き飛んだ。

 自重を支えきれずに倒壊した。他の騎士達は揃って自分達の成果だと土埃の中で歓声を上げていたが、リバス、そしてロデリウスは険しい表情を崩さなかった。


 何故なら、扉は王国騎士団(こちら)側に倒れてきたのである。


「敵が来るぞ! 全軍、武器を構えろぉぉぉぉ!」

「攻城部隊は即時後退! 長槍隊は前進!」

 二人の反応は早かった。

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